1. 1位

    島崎藤村『夜明け前』

    文学の神は細部に宿るといいますが、細部を描いて深遠な本質に迫るというのが名作の要件です。木曽は馬籠の本陣主人の波瀾の生涯を軸に激動の維新そのものを、そして日本人の本質までをも射貫いています。空前絶後の傑作です。

  2. 2位

    海音寺潮五郎『西郷と大久保』

    感情豊かで人望のある西郷、頭脳明晰で怜悧冷徹の大久保。この正反対の二人がどのように薩摩藩を動かし、維新に突入していったのか。変革には二人も天才が必要なのかと慨嘆させられます。

  3. 3位

    山本周五郎『日日平安』

    「小説の神様」と称されたのは志賀直哉ですが、大衆文学系の編集者筋では山本周五郎こそが神様なのではないかと囁かれています。その神様の珠玉の作品集です。映画「椿三十郎」の原作である表題作はもとより、安政の大獄で死を命じられた適塾出身の俊英、橋本左内の最後を描く「城中の霜」を是非。よーく深読みしてください。凄いことが見えてきます。

  4. 4位

    井上靖『蒼き狼』

    チンギスカンの闘争に次ぐ闘争の生涯を描いた一冊です。辺境の地の小さな遊牧民の一部族の長に過ぎなかった男が中国全土を統一し、東欧の一部まで支配下に置いたのですよ。渇いた大地に見事にシンクロする渇いた筆致。滔々と流れる悠久の時間と空間に痺れます。これぞ井上文学の真骨頂です。

  5. 5位

    柴田錬三郎『眠狂四郎無頼控』

    虚無なんです。ニヒルなんです。出自にも時代状況にも人の愛にも絶望してるんです。そんな孤独な剣客、眠狂四郎が巨悪に巻き込まれ、斬りまくります。豪刀・無想正宗を手に円月殺法で妖しく美しく。政治にも経済にも灯りの見えない、閉塞感に満ちた今、読みたい快作です。

  6. 6位

    池波正太郎『雲霧仁左衛門』

    江戸の盗賊組織を描いた小説なんですが、書名はその親分の名前です。火付盗賊改との手に汗握る戦いが描かれます。凡百のスパイ小説が裸足で逃げ出します。この緊張感、スリル、サスペンス。夜の静謐な空気を切り裂くリアリティに腰を抜かしました。大大大傑作です。本当にオススメです!

  7. 7位

    司馬遼太郎『関ヶ原』

    「漢」と書いて「おとこ」と読む、そういう漢がわらわら出てくる歴史巨編です。老獪な知謀を存分に働かせる家康に対して、石田三成、島左近、大谷刑部、上杉景勝、島津義弘らの男気に打ち震えます。あああああ、小早川秀秋……許さん!

  8. 8位

    隆慶一郎『影武者徳川家康』

    徳川家康は関ヶ原の合戦で暗殺され、以降は影武者と入れ替わったという設定による、血湧き肉躍る伝奇巨編です。武将が、忍者が入り乱れ、知謀と権謀の限りが尽くされます。不眠本中の不眠本です。がっつり読書できるスケジュールの時に是非!

  9. 9位

    吉村昭『桜田門外ノ変』

    開明派を粛正しまくった大老井伊直弼が暗殺されたのが「桜田門外の変」ですが、この大乱を首謀者水戸藩士・関鉄之介の視点で克明に描いた大作です。国を想う者のまっすぐな姿勢に強く強く胸打たれます。吉村記録文学の結実です。

  10. 10位

    藤沢周平『橋ものがたり』

    藤沢周平の描く江戸の市井に生きる人たちって、みんな背筋が伸びているんです。心が、気持ちが、生き方が綺麗なんです。ああ、人間って哀しいじゃないですか。愛するがこそ、離れなければならないなんて……。男と女、出会いと別れ、感涙必至の名作です。

    以上10位まで示しましたが、実は物故作家に限っておりまして、順位は生年順でございます。他にもたくさん、素晴らしい作家・作品が新潮文庫にはございます。是非是非自らの嗅覚でご自分の大傑作を掘り起こして欲しいと心より願うのであります。

このランキングのコラムを見る