80年代にはグランブルーファンシーがあった……「ファンシー絵みやげ」で振り返るマリンスポーツ


平成元年あたりのカルチャーを発掘調査している山下メロと申します。80年代とも90年代とも違うその時代を、平成レトロとして愛好しております。

当連載では、80年代から平成初期に流行した「ファンシー絵みやげ」から、当時の流行を紹介していきたいと思います。「ファンシー絵みやげ」とは80年代からバブル経済期~崩壊を挟んで90年代まで、日本の観光地で若者向けに売られていた、かわいいイラストが印刷された雑貨みやげのことです。

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■ 1989年のマリンスポーツ映画

前回、記事公開日にホイチョイ三部作の一作目『私をスキーに連れてって』が放映されました。私はスキーウェアを着て鑑賞し、流れるユーミンの歌に涙したものです。今回は公開日である2017年3月10日に二作目の『彼女が水着にきがえたら』がチャンネルNECOで放映されますので、映画のテーマであるマリンスポーツを紹介したいと思います。

バブル期に本格ブームが訪れたスキーと違って、マリンスポーツはすでにレジャーの定番でしたが非常にお金がかかります。太陽族の言葉を生んだ石原慎太郎さんの小説『太陽の季節』(1955年)の時代に、ヨットやクルーザーは一部の富裕層だけのものでしたが、バブル経済の好景気によってその裾野は広がっていきました。

■ 1986年のファミコン

80年代にマリンスポーツがどのような存在だったかを、ビートたけしさん監修で1986年に発売されたファミコンソフト『たけしの挑戦状』を例に見てみましょう。こちらのゲーム内で、主人公の会社員が資格を取得できるのですが、「はんぐぐらいだー」や「ききゅう」に混じって「すきゅーば」や「ういんどさーふぃん」があります。もちろん安く取得はできませんが、サラリーマンにとってマリンスポーツが決して手の届かないものではなかったことがうかがえます。

■ 1988年のマリリン

『彼女が水着にきがえたら』(1989年)の影響もあり、80年代末に注目度を上げたマリンスポーツはダイビングでしょう。1988年の動物映画『マリリンに逢いたい』においても、海を泳ぐ犬が主役の映画ながら、かなりスキューバダイビングのシーンが登場します。同じ年に公開されたリュック・ベッソン監督の映画『グラン・ブルー』は、フリーダイビングが題材で国内でも90年代にかけて大きく支持されました。

■ スキューバダイビングのスキューバとは?

80年代でスキューバといえば、ヒカシュー、プラスチックスとともにテクノ御三家と呼ばれていた、平沢進のプロジェクトであるP-MODELにも1984年に「SCUBA」というアルバムがありました(初リリースは宝島カセットブック)。ジャケットには潜水服を着たダイバーのようなイラストが描かれており、スキューバダイビングを意味していることが分かります。スキューバとはそもそもどういう意味なのでしょうか。

現在ではスクーバと表記されることも多いこの言葉ですが、そもそもは空気ボンベと付属品を含めた潜水器具一式を指します。もともとは第二次世界大戦の際に軍事目的で開発されたものですが、後に改良されアクアラングという商品名となり1950年代ごろ日本に入ってきました。そのため日本ではアクアラングという商品名(社名も同じ)が普通名詞のように定着していますが、本来は潜水器具の名称がスキューバなのです。また、SCUBAは英文の頭文字をつなげた頭字語、いわゆるアクロニムです。

■ マリーナとグランブルーファンシー

マリンスポーツの拠点となるのは、ヨットハーバーに飲食店などが併設されたマリーナと呼ばれる複合施設です。マリーナの売店でもファンシー絵みやげは売られていたのでしょう。マリーナといえばおニャン子クラブ会員番号36番、渡辺満里奈さんの名前の由来であり、1987年には「マリーナの夏」という曲もリリースしました。

海のファンシー絵みやげはサーフィンモチーフがほとんどで、ダイビングのキャラクターは数えるほどです。サーフィンほど一般的でなかったことと、スキューバでは道具が複雑すぎてデフォルメしづらいことが原因と思われます。ここでダイビングがテーマのファンシー絵みやげを見ていきましょう(キャラクターになっていることも多い海女さんの素潜りはフリーダイビングに含まれますが、今回はレジャーダイビングのキャラのみを紹介します)。

まずは、東京都八丈島の通行手形。潜水に許可がいるのでしょうか。そしてこれで許可証になるのでしょうか。女性は手に魚籠のようなものを持っていますが、手形で許可されてないサザエなどを採集する密猟者なのでは!?

続いて、神奈川県相模湖のダイビングするアヒルのコーヒーマグ。有識者の皆さまは、ソニークリエイティブプロダクツの「レッツチャット」のキャラクターであるアヒルのパッツィーダックと、ゴーグルをしたペンギンのペンジャミンを混ぜたキャラじゃない!?……と思うでしょう。確かにそのような雰囲気もあります。しかし、それ以上に重要なことがあります。それは、ここまでスキューバをちゃんと描いたキャラクターとして唯一なことです。

そして、静岡県は熱海と三島のキーホルダー。サーフボードを持ったペンギン。右のペンギンはシュノーケルなので、ダイビングと言えます。有識者の皆さまは「ペンギンズ・メモリー 幸福物語」として映画化される、ひこねのりお先生のサントリーCANビールのキャラ・ペンギンファミリー、つまり後のペンギンパラダイスであり今のパピプペンギンズじゃない!?……と思うでしょうが、このタッチのペンギンは非常に多いので気にしていたらキリがないのです。

なお、このようなキーホルダーのシリーズは非常に多いので、この機会にサーフボードのものをいくつか紹介します。こちらは、信濃路(長野県)と富士急ハイランド、どちらも海がないはずだがサーフボード!?それから、後述する3月11日のトークイベントで配布するオリジナルキーホルダーも、なぜか海と無縁のゴリラがサーフボードを持っています。最後に、福井県若狭湾。とうもろこしがサーフボードに乗って……ない。ただ上にいる。もはやどう関係があるのか謎。

このように、海があろうがなかろうがサーフボードを持たせるという自由な発想こそがファンシー絵みやげの特徴であり魅力なのです。そして、バブル景気とホイチョイ映画をもってしてもお金のかかるマリンスポーツは大きなブームにならず、より手軽に楽しめるサーフィンが人気だったことが分かりました。次回はさらにサーフィンのアイテムを紹介しようと思います。

■ 保護のお願い

私は全国の観光地で保護活動を行っていますが、現地から消滅したファンシー絵みやげについては、皆様の家に残されたものが頼りです。もしご実家などの学習机の引き出しの中に眠っているものなどが見つかりましたら、是非ともご一報ください。ハッシュタグ #ファンシー絵みやげ での報告も待ってます。

では、まだまだ寒いですが放映に向けて待機しますね。

(文と写真:山下メロ“院長”)

《イベントのお知らせ》
3月11日(土)の昼に新宿ネイキッドロフトでファンシー絵みやげのトークイベントを行います。こちらではファンシー絵みやげの鑑定コーナーもありますので、是非こちらに持ってきてくださいませ。もちろん手ぶらでも大丈夫です。

「ファンシー絵みやげ登校日 PART2」

3月11日(土) OPEN 12:00 / START 13:00 @新宿ネイキッドロフト
前売¥1500 / 当日¥2000(共に限定キーホルダー付、飲食代別)
※要1オーダー¥500以上

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