どうも、服部です。昭和の動画を紐解いていくシリーズ、前回の100年以上前のドイツを紹介した「【驚がく】100年以上前のカラー映像がかなり衝撃的」に続き、今回は1910年代前後と思われる「パリのカラー映像」を取り上げたいと思います(またも昭和以前ですが……)。

「PARIS 1900 1925 la belle époque film en couleur rare version longue(1900~1925年の美しい時代のパリを映した珍しいカラーフィルム【長時間版】)=邦題は著者訳」とタイトル付けされた、9分40秒ほどの動画です。1900~1925年は日本の元号にすると明治33年~大正14年。映像が残っているだけでも驚いてしまう時代ではないでしょうか。BGMが挿入されていますが、ナレーションは入っていません。では、早速見ていきましょう。

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いきなりもの凄い高所での作業風景から始まります(※冒頭の画像)。見たところ命綱のようなものは付けていないようです。こちらから見て右側の男性は、棒の上を座りながら移動していきます。怖すぎます。

こちらでは、ハンマーで何かを打ち込んでいます。再び、見ているだけで腰が引けてしまうような場面です。電灯のような物を取り付けているように見えます。もうお分かりだと思いますが、1900年代前半のパリでこんな高所となれば、エッフェル塔です。

エッフェル塔は、1889年(明治22年)にパリで行われた第4回万国博覧会での目玉として1887年に建造が始まり、わずか2年ほどで完成したのだそうです。建設当時の高さは312.3m。1930年に米国・ニューヨークのクライスラービルに抜かれるまで約40年間、世界一の高さを誇っていました。

アメリカの発明家、トーマス・エジソンが「キネトスコープ」という映画を観る装置の特許を取ったのが1891年なので、それ以前であるエッフェル塔建造時の映像は残っていないと考えられるため、憶測の域を出ませんが、照明装置などを取り付ける工事をしているシーンなのではないでしょうか。眼下にはセーヌ川が流れています。次のシーンでは、上から運ばれてくる鉄柱を降ろす作業が行われています。高所恐怖症の著者には想像を絶する作業です。



場面が変わると、映像の鮮明さが落ちます。時代を少しさかのぼるようです。ここからしばらく、映像右上に1900と文字が載せられているので、1900年(明治33年)の映像ということかもしれません。中央にいる男性は、馬車を操っているようです。

やって来た馬車に飛び乗っていく男性。階段が付いていることから、2階建ての馬車のようです。通りを眺めてみると、この当時のパリの交通手段は、馬車が主流のようです。

鉄道の先頭部分からの映像が映し出され……、馬車が行き交う道路に切り替わります。背後の高架には鉄道が走っていきます。

「Metropolitain」と書かれているゲートから人が出てきます。地下鉄の入り口です。パリの地下鉄が開通したのは1900年のことなので、この右上の1900の数字が年号を表しているのなら、ちょうど開通の年です(ちなみに日本では1902年、東京に現在の銀座線が開通)。

真剣な表情で何かを手回ししている男性が映ります。映写機を手動で回す「映写技師」のようです。映写技師の腕次第で、映像速度と速度の安定度が決まるという重要な仕事でした。



ここから時代は進むようです。映像右上の1900の表示もなくなります。工場で木材を機械でカットし、キューブ状していきます。そのキューブ状ブロックを屋外に運び、積み上げていきます。それを今度は道路に敷き詰めています。遊歩道などの建設シーンでしょうか。



続いては、公道と思われるところを、自動車がスピードを出してやって来ます。見物しているような人もいるので、公道レースが行われているのかと思われます。さらにもう1台。こちらは前出のものよりレーシングカーらしい形状をしています。



再びパリ中心部に戻り、エッフェル塔のふもとが映し出されます。カメラの前を横切った男性が、いい具合に映像に味わいを加えています。正装した紳士淑女たちが歩いています。何が催されているのでしょうか。

続く場面ですが、映像に映っている人たちは、動いていないのに前進しています。「動く歩道」が話題になった、1900年開催のパリ万博の模様なのかもしれません。

続いては、画質からして時代が少し後になると思われます。セーヌ川沿いを歩く黄色いスカーフを巻いた女性とシルクハットの男性、背後にはエッフェル塔とビル・アケム橋を渡るメトロ6号線(当時は2号線)が映っています。美しい光景です。

エッフェル塔のエレベーター入り口のようです。エッフェル塔のエレベーターが斜めに上がっていきます。そして、エレベーターから見た、エッフェル塔頂上付近が映し出されます。



今度は、場面変わって渋滞に巻き込まれた2階建て馬車が映し出されます。どうやら道路が水浸しになっているようです。何のことかというと、1910年1月に起きたパリの大洪水の模様のようです。同年1月20日に降り始めた雨が1週間近く降り続き、セーヌ川が溢れ、ついには街ごと水没してしまったのです。

その100年後に実際に洪水が起こったらという前提で描かれた「PARIS2010-パリ大洪水」という映画や、実際の洪水をCGで再現した動画もあるので、ご存じの方もいるのではないでしょうか。

街なかを船で移動する人たちがいて、水深は浅いようですが、膝のあたりまで浸かって歩いている人たちもいます。愛犬を抱っこして歩く男性や、臨時に作られたのであろう橋を渡る女性の姿があります。なんとも貴重な映像です。



場面が変わり、すっかり車通りの多くなった街並みです。一人の男性が道を渡ろうかどうしようか、危なっかしく動いています。馬車もすっかり肩身が狭くなり、自動車との共存の難しさが垣間見えます。映像はそういう流れなのか、急ピッチで進んでいる感じの道路工事らしき場面が映ります。次々と地下へと下っていく作業車が映されます。地下鉄工事などでしょうか。



時代は進んでいき、トラックが一列に進んでいく場面となります。大砲が運ばれていき、トラックの荷台には兵士らしき姿が見られます。雰囲気からして、これから出兵していくところでしょうか。右前には行進していく歩兵集団もいるようです。



ところが、一転して祝勝モードです。フランスの旗と共に、アメリカの星条旗が掲げられています。とても見にくいですが、画面右端あたりに日本の旭日旗やイングランドの旗などを持った人もいます。第一次大戦では日本も勝者側でした。

パリの街中では大勢の人手と共に先勝パレードが行われているようです。凱旋門をくぐっていく「ルノーFT-17」と見られる戦車の列。

とても激しく動くダンスシーンがあり……、テーブルに上がってダンスをしている女性もいます。ジャズバンド風演奏に……、陽気に踊る人々の姿。「戦争は終わったのです」と伝えている感じです。



最後はエッフェル塔の前での打ち上げ花火。現代の花火と比べると色彩が少ないようにも思えますが、逆に現代の花火の技術の凄さが感じられます。そして、エッフェル塔に少しながらイルミネーションが浮かび上がります。冒頭の映像からの繋ぎでしょうか。

いかがでしたか? ナレーションの説明がなく、資料が少ないながらに解説してみましたが、何はともあれ、100年近く前のカラー映像が頻繁に見られる現在の環境って素晴らしいですね。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)



動画「PARIS 1900 1925 la belle époque film en couleur rare version longue」