先週、『週刊文春』(文藝春秋/1月29日号)を買った。

一冊400円で騒ぐには大げさかもしれないが、今月はすでにジャニーズ関連の出費が家計を圧迫しつつあった。舞台でグッズを買い、NEWSのシングル3枚、KAT-TUNのシングル4枚。NEWSのアルバム予約にコンサートの振込も控えている。そこへ映画の宣伝をかねて、あらゆる雑誌に出まくっている亀梨和也掲載誌を一冊でも多く買い集めようとする中での400円はでかい。しかし立ち読みレベルじゃ済まされない内容が掲載されていた。

『ジャニーズ女帝 怒りの独白5時間』と題し、その横には“ブチ抜き10ページ”の文字。ジャニーズ事務所の副社長であるメリー喜多川氏が、『週刊文春』の取材に30年ぶりに応じ、そのインタビューは5時間にも及んだという。これは事件だ……。

メリー氏はジャニーズ事務所の社長であるジャニー喜多川氏の姉。社長と共に50年超に渡って多数の人気アイドルを輩出してきた、ジャニヲタにとっては神様のような存在である。

5時間に渡って語られたその内容も衝撃的だが、内部の人間がここまで口を開いたことにまず驚いた。なんでも、文春の記者がメリー氏の会合をキャッチし、その目的を聞くべく質問状を送ったことが発端。20畳くらいはあったという大会議室で取材が行われたそうだ。

『言うまでもなく、小誌とジャニーズの因縁は浅からぬものがある。メリー氏は立腹していた』(週刊文春1月29日号より引用)

「そりゃそうだ」とツッコミを入れざるを得ないほど、ファン泣かせの記事を掲載することも少なくない。それも写真付き。しかし事務所側が30年の沈黙を破ってまで応じたのにはどんな意図があるのだろう。


■文春すごい…それが聞きたかった、ジャニーズのアノはなし

メリー氏は、記者が真相を聞くよりも先に同誌が以前報じたメリー氏に関する記事の内容について、誤報であること、そして事前に確認をとらなかったことを指摘したという。そこから話題はジャニーズ事務所の後継者問題に及んだ。

メディアやファンの間ではすっかりおなじみの、ジャニーズ二代派閥問題。メリー氏の娘である同社代表取締役副社長の藤島ジュリー景子氏。彼女が率いる「ジュリー派」(嵐など)と、血縁関係はないがSMAPをスターに育てあげたといわれるマネージメント室長の飯島三智氏の「飯島派」のことだ。事務所の後継をめぐって対立関係にあり、派閥を跨いでの共演はないと言われてきた。ちなみに、KinKi Kidsやタッキー&翼らは中立派(ジャニー派)。

テレビで観ない日はないほど露出が多いジャニーズだが、局によって出演者に偏りがみられる。例えば日テレの音楽番組にはジュリー派の嵐、NEWS、KAT-TUNらが出演していて、そこに飯島派のSMAPやキスマイの姿がないことも多々あった。派閥らしき様子は度々ツイッターなどでも話題になり、そんな記事もたくさん目にしてきたので、あながち間違いでもないような気がしていた。


■あるような、ないような、本当のところは?

記事によれば、社長らの高齢化もあり、派閥問題が色濃く出ているので横断的なキャスティングを避けている、飯島氏はSMAPと一緒に独立する、といったテレビ関係者によるコメントが並んだ。しかしメリー氏は派閥の存在を否定し、あっさりとジュリー氏が次期社長だと公言した。おぉー!直球すぎる。

『うちの事務所に派閥があるなら、それは私の管理不足です。事実ならば許せないことですし、あなた方にそう思わせたとしたら、飯島を注意します。今日、(飯島氏を)辞めさせますよ。仕事の大事なことって、そういうことだから』

即座に飯島氏に連絡をとり、取材現場に呼び出したという。それは「事務所に派閥があったら会社の恥」だから。……すごい。

「飯島が自分が担当している人間を番組に入れるのは当たり前のことじゃないですか。間違いがあるとしたら、この人(飯島氏)はSMAPが長すぎているのかもしれませんね。」と、派閥としてみられる原因をこう語った。

また、駆けつけた飯島氏も「私も大変困ってまして、本当になんとかしていただきたいなと思っているんです。(中略)雑誌の方がそのようなことをお書きになると、事実ではないかと思う方もいらっしゃる。全くそういうことはないと思います。のびのびとやらせていただいているので」と明かした。

キャスティングはテレビ局が決めることであり、オファーをしてもスケジュールの都合でブッキングできないことも多いそう。 「派閥なんて、私は天に誓って言った覚えはありませんので。今まで生きている中で」飯島氏は派閥についてきっぱりと否定している。加熱するメディアやブログについても言及し、重い口を開いた事務所側の意図が伝わってきた。急に呼び出されてこの話題とは少々キツイ……。読んでいるだけでも冷や汗ものだ。


■憶測が飛び交う後継者問題

また、後継者については、すでにジュリー氏が生まれた時から決めていたことも明かした。幼い頃からミュージカルを見せたり、どんな本でも読んで、どんな仕事でもできるようにと、四カ国語を読み書きできるようにするなど、事務所を背負って立つ人間として相応しい教育をしてきたという。

「うちの仕事を継ぐなら英語はマスト。だってミュージカルができないから。いい台本は、その国の言葉で読むべきです。私はそういうつもりで育ててますもの。」と、メリー氏がどれほど手塩にかけて後継者を育ててきたのかが分かり、同時にこの仕事に人生の全てを捧げていることを表わしているようでもあった。

「娘より大事なのはタレント。でも、その次はやっぱり自分の家族。社員も大事にするけど、タレントで精一杯ですよ。」

例えば乗っていたボートが転覆したときに浮き輪が一つしかなかったら、浮き輪を娘に渡して他の子は全部抱えて泳ぐと例えた。凄まじい覚悟だ。

以前、竹内まりやがNEWSのラジオ番組に出演したときに、アイドルとしてステージに立ちながらマルチに他の仕事もこなす姿に、忙殺される毎日を送るにも関わらずどうして普通の感覚を保っていられるのか、と感心しながら尋ねたことがあった。

記事を読んでいると統治者の絶対的な「決定」が印象に残るが、これによって事務所の軸が形成され、やがてタレントの“普通の感覚”を保つことに影響しているのではないかとも思った。

記事全文を読み進めるのには、勇気が要ってちょっとばかり変な動悸がした。でも激しい口調からはタレントに対する深い愛情が感じられたし、ショービジネスという揺るがない軸の存在を改めて認識した。

メディアやファンが感じていた、派閥ごとの偏りのようなものは事務所側が公言したことによって一つの答えが出たので、これを一つの区切りとして今後の活躍を見守っていきたいと思う。

2015年元旦。蜷川幸雄がパーソナリティを務めるNHKラジオに、ジャニー喜多川氏がゲスト出演。それに続いてメリー氏が30年の沈黙を破って文春の取材に応じるなど、2015年がスタートしてまだ1ヶ月ほどだが、ファンにとっては歴史的な出来事が相次いだ。今年は何かものすごい激動が待ち構えていそうで、今からそわそわしている。


(柚月裕実)