みなさんは「白い絶景」と聞いてどこを思い浮かべますか?筆者は世界遺産、トルコ「パムッカレ」の石灰棚と、グレートバリアリーフの「ホワイト・ヘブン・ビーチ」の真っ白い砂浜がパッと浮かびました。乾季の「ウユニ塩湖」や人気上昇中のブラジル「レンソイス」の純白の大砂丘を挙げる方もいることでしょう。

でも「憧れの絶景ってみんな遠すぎ!行く時間もお金もない」…いえいえ、そうとは限りません。実は思い立ったらすぐにでも、しかも家族揃って手軽に行けちゃう「白い絶景」があるんです!

その場所の名は山梨県北杜市の「日向山」

ひなたやま、何て地味な名前(笑)。でも世界遺産に引けを取らない壮大な絶景に、見た人は必ず歓声をあげる…と聞いたら行かない手はありません。さっそく山梨へGO!

▼▼▼▼▼▼
■この記事の完全版(写真・地図付き)を見る
▲▲▲▲▲▲

ちなみにこの場所、2004年の合併前は「白州町」で、サントリーウイスキー「白州」の蒸留所&「南アルプスの天然水」の工場がすぐ近くにあります(下記の地図中、カクテルグラスのマークの位置)。

映画「いま、会いにゆきます」のロケ地で有名な60万本のひまわりが一面に咲き誇る「明野ひまわり畑」も割と近い!(下記地図をズームアウトで広域表示にすると東南方向に表示される、「須玉IC」東の黄色いマーカーの場所)。

奇しくも2016年から8/11は「山の日」「白い絶景」の山と、ちょうど見頃の「黄色い絶景」をめぐる1日にするのも良さそうだし、夏休みの家族のお出かけにもオススメです!では、地図を元に、日向山のハイキングコースと絶景ぶりを紹介します。

※元記事に地図あり

「日向山」表示と駐車スペース(Pマーク)をつなぐ赤線がファミリーにもおすすめの手軽なコースで「コースA」とします。ここを登り・下りの往復に使うのが基本!

Pマークから黄緑線をたどって山頂へ行き、下りはコースAを使う周回路を「コースB」とします。こちらは★の箇所に「錦滝」という見どころがあるけれど、コース全般が荒れて危険個所も多数。参考コースとして紹介します。

温泉マークは下山して立ち寄るのにぴったりの「尾白の湯」、コースA・Bから離れたPマークは、混雑時の駐車場「尾白川(おじらがわ)渓谷駐車場」です。
トイレマークは登山口へ向かう道路の入り口にある「道の駅はくしゅう」

日向山のコース中にトイレはないのでココで済ませて!という思いを込めてトイレマークにしちゃいました。でも「道の駅」なのでもちろん美味しそうな食べ物やお土産もたくさん。帰りに寄るとよいかも。ここから登山口までは地図中の水色線のルートを車で進みます。行く手には南アルプスの雄「甲斐駒ケ岳」の白く堂々たる山頂と連なる山々が美しく出迎えてくれ、テンションが上がる!

※元記事に写真あり

のどかな風景の中、ひたすら直進すると林道の入口に。別荘地を抜けてどんどん狭く、悪路になる林道を慎重に上がっていきます。道の駅はくしゅうから車で15分ほど走り「矢立石(やたていし)」登山口の駐車スペースに到着!といっても駐車できるのはせいぜい十数台。

※元記事に写真あり

もはや10時すぎは満車……Uターンもできないような狭い路上で途方に暮れていると「朝イチで登ってもう帰るのでここ空きますよ~」という神のような女性の声。ありがたく駐車させてもらい、いよいよ日向山のハイキングがスタートです。

▼▼▼▼▼▼
■この記事の完全版(写真・地図付き)を見る
▲▲▲▲▲▲

■コースA:同じ登山道を往復
<登り1時間40分/下り1時間(休憩を除く)>


登山口の道標に従い「→」の方向へ。木やゴムタイヤを埋め込んだ階段が随所に整備されて歩きやすい登山道。山頂まではゆるやかな傾斜ばかり。のんびりジワジワ登っているうちに絶景に到着するから、ちびっ子や初心者、体力衰えてきた…なんていう大人でもこれならツラくなさそう。まさに「ファミリーハイク」にはうってつけのコース!

ただ始終、樹林の中のため夏の眺望はほぼゼロ。飽きないように、ちょこちょこ生えているキノコを愛でたりなんかしながら進むのがオススメです。

※元記事に写真あり

キノコはむやみに手で触らず、眺めたり写真に撮ったりして楽しみましょう!筆者は、左上の鮮やかな黄色と薄汚さが同居したキノコがどうにも気になって、帰宅してから調べたら「キアミアシイグチ」というキノコと判明。たぶんですけど。

他にも苔むした岩を見て、下山したら「そら豆とビール…」とか妄想したりしてる間にもう4合目に到達!

※元記事に写真あり

この現在地表示が意外と優れもの。山頂までを10に分け「10\4」なら、「もう4割登った」という目安に。次は5、次は6と見つけながら登って行けば小さな達成感もあり、疲労も少なく感じるのが不思議。

※元記事に写真あり

「10\8」くらいまで来ると、生えている植物がいつしか針葉樹と熊笹に変わり、鳴いている鳥もおそらくシジュウカラやルリビタキだったのが、ウグイスに交代。アメダス雨量観測計が出現したらその先はほぼ平地。そしてあと10分ほどで絶景…!

※元記事に写真あり

と、その前に「三角点」という表示が。何を隠そう、実はこの三角点こそが1659.6mの日向山の「山頂」なのです。一応見に行くと

※元記事に写真あり

ぽつーーーん。。。
まったく見通しのきかない林の中に標石ひとつ。稀に見る「残念な山頂」をあとに絶景へ急ぎます!ここまで本当に絶景が開けるのか不安になるほどの樹林帯だったのが、最後の最後にきて心なしか足元も白く、木立の向こうに眩しい光明が!!

▼▼▼▼▼▼
■この記事の完全版(写真・地図付き)を見る
▲▲▲▲▲▲

■日向山の白い絶景!「雁ヶ原」

※元記事に写真あり

うわぁぁぁーーー!突然現れた大絶景!!

まさに“天空のビーチ”。ムダに広い砂浜、いや白い大地のプレイグラウンド感が半端ない!北東方向を見れば

※元記事に写真あり

八ヶ岳連峰が目の前にドーーーン!

※元記事に写真あり

足元には巨大地割れ!こ、怖い……。
滑り落ちたらそのまま冥界に転送されそうな白ザレの斜面!
あわわわ、下ばかり見ていると吸い込まれそう。。。

※元記事に写真あり

岩のゴッツゴツ感もすさまじい!
パムッカレじゃなくて、同じトルコの奇岩で有名な世界遺産「カッパドキア」的な風情も。想像をはるかに上回る絶景ぶりに興奮と歓声が止まらない…。

この山頂のようで山頂ではない、白砂の一帯は「雁ヶ原(がんがわら)」と呼ばれていて、白さの正体は「花崗岩(かこうがん)」が風化、崩壊したもの。かつて海底(!)で生まれた花崗岩の地層が、数十万年以上前に隆起して山ができたとき、ここに現れたのだとか。持ってみると確かに驚くほどボロボロで、白い粉が手に付くほど。

※元記事に写真あり

雁ヶ原は西側へ広がっていて標識に「日向山 山梨百名山」の文字も。その遥か奥に甲斐駒ケ岳が見えるけれど白砂の山頂には雲が。惜しい!でも、同じ花崗岩質で同時代に隆起したという“白砂の絶景兄弟”、甲斐駒ケ岳と鳳凰山が日本百名山なのだから、個人的に日向山も「日本百名山」でいいと思う。

※元記事に写真あり

西側へ行ってみると倒木がゴロゴロ。波で運ばれてきた流木に見えてやっぱりここはビーチ!?と錯覚がおさまらず。

※元記事に写真あり

日本離れした景色、真っ白と山の深緑のコントラストが美しい…。筆者だけでなく、その日、雁ヶ原にいた人々が「いつまでもここにいたい~」と口々に叫んでいました。

※元記事に写真あり

雁ヶ原の西端は衝動的に「砂スキー」したくなる幅広の斜面!コースBから来るとココを登ってくることになります。右手の樹林の中に消えていく道は「鞍掛山」への登山ルートですが、ここから片道3時間以上の痩せたハードな尾根道を登るようなので、間違えて迷い込まないようにしましょう。尾根道が始まる手前までならば

※元記事に写真あり

下りて振り返るとゴジラの背中のようなカッコいい絶景岩が見られるのでおすすめです!(また登り返すため残りの体力にご注意を)

▼▼▼▼▼▼
■この記事の完全版(写真・地図付き)を見る
▲▲▲▲▲▲

■コースB:錦滝経由で周回
<登り1時間50分/下り1時間(休憩を除く)>


こちらのコースは錦滝までは落石に注意、錦滝から先は急坂やクサリ場(危険個所)があるので、「山が初めてではない大人」「登りのみに使用」が推奨です。

※元記事に写真あり

矢立石登山口でコースAと逆方向、茶色い「錦滝」の案内に従って左方向へ進みます。注意書きもよく読んで心構えを。

※元記事に写真あり

車両通行止めのゲートでは左横を通りぬけ、あとはひたすら道なりに直進です。ガードレールが脱落していたり、大きな岩が落ちてきていたりするので要注意!アップダウンもなく、40分ほど歩けば錦滝とあずまやに到着。

※元記事に写真あり

錦滝は小ぶりながらもとても華麗な滝で、見ているだけでも涼しい気分に。滝つぼの近くや流れのそばまで下りられるので行く人は気をつけて。さすが南アルプス、水がすごく澄んで冷たい気が。

さて、滝でリフレッシュしたらここからいよいよ日向山(雁ヶ原)に向けて難所の登りです。と、その前に一点ご注意。錦滝の先、矢立石と逆方向に「尾白川渓谷道(不動滝)→」という案内が出ています(黒ずんで見づらいですが…)。

※元記事に写真あり

指し示す方向を見ると、通行止めのゲートが。以前は、「不動滝」などいくつかの滝と渓谷が美しい「尾白川渓谷」沿いのハイキングコースを登って来ると、今いる地点とつながってそのまま日向山を登って周回できたようなのですが、このゲートの先の道が台風で崩落してしまったそうでハイカーも通行禁止になっています。

日向山への登り口はゲートとは逆の、錦滝に向かって右手、あずまやの奥ですのでお間違えのないように。

※元記事に写真あり

では出発!そしていきなり急坂が始まったと思ったら巨大な岩に鎖が取り付けてあって道幅が激セマ!垂直に近い鉄階段も登場。慎重に登れば何とかなるけど、ここを下る気にはなれません。上から見たら恐怖倍増!

※元記事に写真あり

その後のコースも割とみんな手をつきながら登っているような急傾斜が続き、向かい側から一歩一歩お尻をついて座りながら下りてくる人も見かけました。急傾斜の下りは恐怖感も増して事故も増えるので、避けた方が身のためですね、ホント。さらに、両側が谷で片足分しか道幅のない、今にも崩れそうな場所を通ったりしながら

※元記事に写真あり

錦滝から頑張って1時間ほどで、鞍掛山と日向山の分岐点に到着。
ここで、日本で最もポピュラーな昭文社の「山と高原地図(北岳・甲斐駒)」を見ると「分岐を左に行って尾根へ上がると右手が雁ケ原」と読めてしまうけれど間違い。「分岐を右に行けばそこが雁ケ原で日向山」が正解です

※元記事に写真あり

そんなクレームを受けて作られたんでしょうか。案内表示がまだ新しい。そしてコースAと同じように、急に足元が白く、木立の向こうが明るく輝き出したな~と思ったら…

※元記事に写真あり

ドーーーン!
雁ヶ原の西端斜面の底に飛び出しました。登りがキツかった分、感動もひとしお!斜面を一気に駆け上がりたいくらいテンション上がるけど、体が追いつかない…。しかも白砂にズブズブと足を取られ、容赦なく体力を削られます。最後の力をふり絞って斜面を登り切ると、雁ヶ原の絶景と“ゴジラの背中岩”が待っています!(ここでコースAと合流)
下山するときは、コースAを通って「矢立石」登山口へ。

※元記事に写真あり

以前は立て札がなく、コースBから来た人がどこから下山していいか分からず迷って遭難するケースがあったようですが、今は→の所から下りればいいので安心ですね。

▼▼▼▼▼▼
■この記事の完全版(写真・地図付き)を見る
▲▲▲▲▲▲

■温泉とアクセスについて

下山後の楽しみといえば温泉!一番近くてオススメの「尾白の湯」は、日本最高級の「超高濃度の温泉」だそう。しかも露天風呂の真正面に八ヶ岳連峰がバッチリ見えるので、日向山の絶景の余韻にひたるには打ってつけです。

●尾白の湯 ※「白州・尾白の森名水公園“べるが”」内にあります
http://www.verga.jp/?page_id=41


また、当コラムでは矢立石登山口そばの駐車スペースを紹介しましたが、特に春・秋のシーズンは大混雑、夏もすぐ埋まってしまうので、最初から80台駐車可能な「尾白川渓谷駐車場」に車を停めて矢立石まで行き来する手も。

その場合は登山口の前から樹林を通り、駐車場近くの「竹宇駒ヶ岳神社」横へと通ずる道があるそうなので、下りは40分、登りは1時間の所要時間をハイキングにプラスして見込んでください。

●北杜市「尾白川渓谷」と駐車場の説明
http://www.city.hokuto.yamanashi.jp/genre/detail/1835/


これだけ世界遺産級にダイナミックな絶景で、登山口から2時間半で往復できる手軽さなのに、唯一のネックが「アクセスの悪さ」。以前はJR韮崎駅から尾白川渓谷駐車場まで季節運行のバスが出ていたけれど廃止されたもようです。

ふだん公共交通アクセス派の筆者としては、韮崎駅や日野春駅から「北杜市民バス」を利用できないか調べてみたところ、便数が1日数本と少ないうえ、道の駅はくしゅうバス停から矢立石登山口まで登り2時間・下り70分。登山口から雁ヶ原への往復よりも時間がかかってしまう!ということで今回は泣く泣く断念。

北杜市観光協会でも電車の場合は、JR長坂駅、日野春駅、小淵沢駅からタクシー利用をお勧めしているそうです。

●北杜市観光協会「ほくとナビ」日向山ページ
http://www.hokuto-kanko.jp/guide/mt_hinata

とはいえ、アクセスの悪さが幸いして、高尾山や富士山みたいに人気爆発の「大渋滞山」になっていないことも事実。

登山口までアクセスしてしまえば、大絶景はすぐそこ!

興味のある方、雁ヶ原の花崗岩が風化し切ってしまう前にぜひ訪れてみてください。


(スージー小江戸)