どうも服部です。昭和の動画を紐解いていくシリーズ、今回はYouTubeに投稿されていた1932年(昭和7年)の日本を撮影したというモノクロ映像を取り上げました。

1932年というと、世界大恐慌のあった3年後、満州国の建国宣言や五・一五事件、ドイツの総選挙でナチスが圧勝するなど、少しずつ後の大戦へ繋がるできごとがあった年でもありました。早速見ていきましょう。

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「JAPAN LAND OF THE CHERRY BLOSSOMS(日本~桜の国~=著者訳)」というタイトルの、恐らく海外を紹介したアメリカのフィルムだと思われます。もともとはナレーションが入っていたのではないかと考えられますが、当映像には入ってなく、前半部分には1938年(昭和13年)に発売された曲「支那の夜」が挿入されています。

主題である桜のアップから始まります。

港に船が着く光景です。外国人が日本にやって来るという設定のようです。桜の花びらを手にする女の子。放送中のNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」の三女、美子を彷彿とさせるおかっぱ頭です(執筆現在)。

商店街のような道が捉えられますが、はっきり読める看板などもなく、場所は特定できません。日の丸と米国の星条旗が掲げられているのが見えます。船で到着した客人を出迎えるためのものでしょうか。

日本舞踊のシーンが挟み込まれますが、何か変ですね。二人ほど見える三味線の奏者が、いずれも左手でばちを弾いています。

場面は替わって、桜が咲く庭園を歩く和服姿の女性4人。モノクロでも十分美しいです。

後ろに見えるのは、広島県は宮島の豊国神社の五重塔のようです。手前にはシカの姿が。続いては嚴島神社の大鳥居を背後にシカにエサをやっているシーン。戦前日本を紹介する海外メディアの映像は何度か取り上げてきましたが、宮島も定番の紹介スポットです。



満開の桜と、橋を渡って来る女性を捉えています。なんとも優雅です。

場所は特定できませんが、左右に衣料品のお店が並ぶ商店街のようです。桜の季節にしては、みなさん厚着ですね。

お付きの方(?)を連れた和装の女性をカメラが捉えると、女性は顔を背けて歩いていきます。それを見ていた学生さんも苦笑い。

続いては、女学生2人組を捉えます。おさげ髪こそ古風ですが、このままカラー映像になったら現代と違和感がなさそうな光景です。こちらは喜捨を請いに来た虚無僧を捉えています。

お店なのでしょうか、屋外でうどんのようなものを食べる女性の姿も(※冒頭の画像)。左手で箸を持つことに対して厳しい時代だっただけに違和感がありましたが、先ほどの三味線のばちを持つ手も逆だったことから、この映像全般に左右反転しているのかもしれません。

こちらは、手鏡を見ながら口紅を直す女性。十代前半にも見えます。

奈良・猿沢池でしょうか、五重塔を望んでのお花見シーン。桜と和装した女性が相俟つと、なぜこんなにも美しくなるのでしょう。

神職の装束の男性がラッパを鳴らします。鶴のような鳥の前をやってきたのは、シカの群。現在ではナチュラルホルンで呼び寄せるそうですが、当時はこのようなラッパが使われていたようです。外国人旅行者(?)だけでなく、日本人もご満悦の様子。



その後、鎌倉や皇居など関東の名所が映された後、当時「円タク」と呼ばれていたタクシーの列が捉えられます。手前に見える「停止線」という標識で、映像が左右反転しているのが確実になりましたね。

鉄道の車窓からと思われる映像を挟んで……、撮影隊は郊外に出てきたようです。旧東海道でしょうか。

最後は、これも日本を紹介する海外メディアの定番、富士山を映しての幕切れです。



8分弱の短い映像でしたが、お決まりの観光地だけではなく、人々の自然な日常生活などもいろいろ捉えていて、とても貴重な内容でした。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)