シーズン最高峰の戦い「世界フィギュアスケート選手権大会」が、3月28日〜4月3日までアメリカ・ボストンで行われた。

日本人選手で表彰台に上ったのは、男女シングル・ペア・アイスダンスあわせて羽生結弦ただ1人。

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男子は2012年と14年に表彰台の2つを日本人選手が占め、女子は02年以降、06年のモスクワ大会を除き、毎年誰かしらがメダルを手にしていたことを考えると、いよいよ日本が追う側にまわる新時代に突入したのだと感じる。

さて、スポーツである以上、結果を出すことはもちろん大事だ。けれども、結果以外のところで感動を与えてくれるからこそ、フィギュアスケートはファンを増やし続けてきたのだろう。 今大会では特に、女子シングル選手の「笑顔」が印象的だった。そこで今回は、世界フィギュアの「ベストスマイル」トップ3を勝手に表彰しようと思う!


3位:メドベデワの「セーラームーン」にスケオタ歓喜!

昨年12月のグランプリファイナルで、浅田以来となる「初出場で優勝」という快挙を成し遂げたロシアのエフゲニア・メドベデワ。人懐こい性格と、天真爛漫な雰囲気は、ロシア女子勢のなかでは異色。「あのストイックな女子たちに囲まれて、生き残っていけるのかしら」と心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。

SP、FSともに、「可愛い顔して」と言いたくなるような完璧な演技をみせてくれたメドベデワ。音感の良さを感じさせるリズムのとり方や柔軟性は、今後も彼女の強い武器になるだろう。

FS演技後、メドベデワはフジテレビのインタビューに、「日本のテレビですか?」「よかったら日本のファンに喜んでもらえそうなことをやりたいのですが」と興奮気味に発言。それから突然、『美少女戦士セーラームーン』の主題歌『ムーンライト伝説』を歌いだした。

これには、スケオタも騒然! Twitterでは「エキシビションでセーラームーンを踊ってほしい!」というつぶやきが飛び交った。

歌い終わると満足そうな笑顔になったメドベデワ。実は上位3選手が待機するグリーンルームでも、場を和ませようと浅田真央に歌を聞かせていたという。戦いのなかでも相手を思いやれる人間力こそが、彼女を「優勝」に導いたのかもしれない。


▼メドベデワはInstagramでもセーラームーンのイラストを公開!

2位:浅田真央、誰も真似できない圧倒的な個性

「疲れたぁ〜」。FSの演技が終わったあと、キスアンドクライで浅田はこう洩らした。しかし、その顔に浮かんでいたのはやわらかい笑顔。浅田の言葉には、長かったシーズンがようやく終わったことへの安堵の気持ちと、復帰シーズンの苦しさに堪えてきた自身に対する「お疲れさま」の思いが感じられた。

高度な技をこなす若手選手が次々と育っている現在のフィギュア界。しかし今大会のFSで、やはり浅田の演技は別格だと感じた。観客の視線を釘付けにする世界観の構築力は、誰にも真似できない浅田の個性だ。

羽ばたく蝶のように両手を広げてフィニッシュすると、一度頭を後ろにのけぞらせて、「やりきった」という表情。そして、高まる気持ちを鎮めるように胸に手を当てて、美しい笑顔で客席に手を振った。

今大会から解説者としてフィギュアの世界に戻ってきた髙橋大輔は、その笑顔を見ながら、「4分間がすぐに終わるくらいずっと見ていたい演技でした」とコメント。この瞬間、浅田のFSを見ていた誰もが同じように思っていたに違いない。

1位:全米の期待を背負って…ワグナー渾身の「ムーラン・ルージュ」

ミシェル・クワンやサーシャ・コーエンなど、魅力的なスケーターを数多く輩出してきたアメリカは、「スケート大国」というイメージが強い。ところが、06年にキミー・マイズナーが優勝して以降、アメリカの女子は世界選手権で表彰台を逃し続けてきた。

地元開催となる今大会。女子シングルに出場したグレイシー・ゴールドとアシュリー・ワグナーには、「何としても表彰台に上らなければ」というプレッシャーがかかっていたことだろう。

FSを終えて、ゴールドは3位。演技者はワグナーを残すのみだったから、米国のメダルは確定していた。同胞の頑張りにより気持ちに余裕が生まれたか、あるいは後輩に負けていられないと火がついたか。ワグナーは冒頭の2アクセルを力強く決めると、「自らのキャリアと重なる物語」である『ムーラン・ルージュ』を熱演。終盤に近づくにつれて大きくなる歓声とともに、たぎるようなエネルギーがワグナーの体を包み込んでいくように見えた。

ワグナーはフィニッシュと同時に、顔を覆って嗚咽した。「ただ感動で、もう点数どうでもいいなという感じですね」というのは髙橋のコメントだ。解説者としてはやや問題発言かもしれないが、いい演技を見せてくれたワグナーへの心からの賞賛が伝わってくる。

キスアンドクライでシーズンベストの215.39点という得点と2位入賞がコールされると、「キャー」と声を上げて立ち上がり、コーチ陣と抱擁。いつもあと一歩のところでチャンスを逃してきたワグナーだが、この日は晴れ晴れとした笑顔を客席に向けて、大きくガッツポーズをしてみせた。

(東谷好依)