コンゴのファッショニスタ集団「サプール」を知っていますか?

2014年にNHKの番組で紹介され、「エレガントな装いこそ人生のすべて」という粋なマインドとセンスの良さが共感を呼びました。

コンゴの平均的な月収は約3万円。サプールの中にも貧しい人が多くいますが、着飾って街を歩くことで、心の豊かさや自分らしさを表現しています。

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そんなサプールの文化と暮らしに迫る写真展
「THE SAPEUR ~コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン~」
が3月29日(火)より西武渋谷店でスタート!

今回は、写真展にあわせて来日したサプールのセブラン氏と、写真家・茶野邦雄氏のインタビューをお届けします。


■争いではなく、おしゃれをしよう!

——日本では、2014年12月にNHKで放送された「地球イチバン」でサプールを知った人が多いですが、実はコンゴで90年以上受け継がれてきたファッション文化なんですよね。

茶野 コンゴは、1960年まではフランスの植民地でした。フランス軍に従軍していた人たちや、使用人としてフランス人と共に生活していたコンゴ人を中心に、ヨーロッパのスタイルが広まっていったようです。

セブラン 国が独立した後、1970年代になってから、サプールはスーツやネクタイなどのフォーマルな服を着るようになりました。ところが当時は、政府や自警団に「不良」と言われて非難されたのです。「スーツを着るのは悪いことじゃない。平和のためにおしゃれをしようじゃないか」と運動を行った結果、徐々に存在が認められるようになりました。今では、大統領もサプールと一緒に写真を撮りたがります。この40年ほどの間に、環境がガラリと変わったのです。

——セブランさんと茶野さんはどのように知り合ったのでしょうか。

茶野 僕は、2014年にギネスビールのショートムービーを見てセブランさんのことを知りました。セブランさんは、国で内戦が起きたときに、略奪にあわないよう洋服を自宅の庭に埋めたそうです。1年ほどの避難生活を経て、やっと自宅に帰って来られた時に庭を掘り起こしたら、洋服やアクセサリーがすべて朽ち果てていた。ショートムービーの中で、「私はサプールにとっての生きる証をすべて失くしてしまった。戦争をしても何も残らないし、何の意味もないものだ」というシンプルで明確なメッセージを発しているのを見て、この人にぜひ会ってみたいと思いました。現地のコーディネーターを介してお会いすることができたのが、15年2月。それから撮影を始めて、写真集「THE SAPEUR」が完成しました。サプールを象徴する存在として、写真集の中でも彼が重要なポジションを占めています。

セブラン 多くのサプールのなかで、私を被写体に選んでいただいたことに感謝します。茶野さんに写真を撮っていただいたことがきっかけで、ずっと憧れていた山本寛斎さんにお会いできたのも嬉しかったですね。

——サプールに対してマイナスの感情を抱いている人もいるのでしょうか。

茶野 コンゴにも、「俺らはサプールじゃない。サプールは嫌いだ」と言う人はいますよ。平等ではない妬みも起きやすいし、それは仕方がない。

セブラン サップというのは、本来「清潔さ」という意味です。誰しも、清潔でいる方が好きですよね? だから、基本的には皆、サプールが好きなはずなんですよ。サプールを嫌う人の中には暴力に訴える人もいますが、サプールは応対しません。それが、相手をリスペクトして平和を願うサプールのマインドです。


■使うカラーは3色まで!サプールのおしゃれテクニック

——スタイリングのこだわりを教えてください。

セブラン 一番大事なのは、カラーの調和と、一目見て「サプールだ!」と分かるようにすることです。とはいえ、カラフルに装えばいいというわけではなく、3色までに限定するのがサプールのルール。今日は、青いスーツに合わせて、スカーフとネッカチーフと帽子のリボンを青にしました。帽子と靴とサスペンダーは黒で統一して、シャツと蝶ネクタイと靴下はベージュを選んでいます。カラーの調和のために、アイテムを自分でカスタマイズすることもあります。今かぶっている帽子には飾りがついていなかったので、青いリボンを選んで巻いてもらいました。

——サプールにはファッション以外にもルールがあるのでしょうか。

セブラン ルールの1つに、エレガントで洒脱な仕草があります。たとえば道を歩いていて、「セブランさん」と誰かに呼び止められたとしますよね。その時にすぐに振り返ってはダメ。一度回転して相手の姿を確かめたら、また前に向き直って、後ろ手で「こっちに来い」と合図をします。それから相手が合流するまで、スローペースで歩くのです。また、タバコの火を消すときに、普通の人は靴底でギュッと踏みつぶしますよね。でも、サプールはタバコの上で軽いステップを踏んで消します。人目を惹きたい時に、わざとステップを踏むこともあります。

茶野 彼はこの間、電車の中でもステップを踏んでいました(笑)。


——今回の写真展の見どころをお聞かせください。

茶野 テレビでサプールを知った人の多くは、ビビッドな色合いのスーツをまとうのがサプールらしさだと思っていますが、実はそうではありません。セブランさんなどは、差し色でビビッドな色を使うけれども、スーツはコンサバな色を選ぶことが多い。地域によっても色の選び方が異なり、たとえばコンゴ民主共和国の首都・キンシャサのサプールは、黒やグレーをまとう人が多いです。これまで紹介されてこなかったサプールの文化に触れられるところが、今回の写真展の見どころですね。

また、会場では、写真を撮影しているときの様子や、彼らが踊っているところをムービーでも見ることができます。セブランさんが会場にいる時は、リズミカルなステップを間近で見られるかもしれません。写真展に来ていただく際には、お客様にもとびきりのおしゃれをしてきてほしいですね。たまに盛装すると楽しいし、シャキッとした気分になりますよ!

(いまトピ編集部 ユイ)