米倉涼子主演『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系/木曜22:00)シリーズ第3弾がスタートした。視聴率も3話連続で20%を越えるなど、絶好調のようだ。そこでこのドラマの魅力を探ってみた。


■ドクターX 大門未知子とは?

米倉演じる大門未知子とは、“異色・孤高・反骨の天才フリーランス外科医”というキャッチフレーズがついているが、そのとおりの人物である。ハイヒールにミニスカートという派手な出で立ちで院内を闊歩し、趣味、特技ともに手術。群れを嫌い、病院に古くから根付くしきたりにも一切従わない。しかし男まさりとも違い、女性らしさを保った職人気質といったところだ。

大門は大学病院を退局後、海外で僻地医療などを経て帰国。現在は「医師紹介所 神原」に所属し、フリーランスの外科医として大学病院などへ派遣されている。第3シリーズでは日本最高峰の医療技術を集結した、国立高度医療センターが舞台。

カネとコネが横行する大学病院。その白い巨塔において、派閥に属さずしがらみに屈することなく医療技術一つで人命救助にあたる。口癖は「いたしません」。相手が誰だろうが臆せず意見し、医師免許がなくてもできることは一切しないという徹底ぶり。一番エライ人との握手でさえ拒んだ。

失敗を恐れ、権力や派閥抗争に奔走する医師の中で、自分の腕を信じ、手術を通して患者と向き合う。技術をもって働くということはこういうことなのか。



■シメシメ…してやったりが味わえる

年功序列とも限らない病院の組織構造。権力争いに打ち勝つためにはカネとコネ、そして実績が必要だ。世界初の症例や術式が確立されていない、難易度の高い手術への挑戦成功がこの世界では賞賛される。よりインパクトのある実績を積んだ者だけが上にのしあがれる。

今回の舞台は、国の肝入りで設立されたた特定機能病院。集められたのは東西を代表する「東帝大学病院」と「西京大学病院」。院内ではこの両者による覇権争いが勃発している。

ここに登場するほとんどの医師が派閥に所属し、常に上司の顔色を伺い、自分の立場を守るために奔走する。家族がいればなおさら弱腰である。これはどこにおきかえても珍しいことではなさそうだ。

患者の命を救うことが医者の使命だが、そこに立場や利害関係が絡むことでややこしくなる医局。より難易度の高い症例に取り組み、そして成功させることで力をアピールしたい下心もある。こうした余計なことに巻き込まれて執刀医の座を外されることが多い大門だが、手術室へ入れば話は別だ。

ベテランの執刀医ですら腰を抜かす難易度の高い手術を、彼らに代わってそれも前例にない術式で成功させる。人間の様々な欲望が複雑に絡み合う世界で、生き残るためならば手段を選ばない人たちに対するギャフン感がたまならいのである。



■はっきり、きっぱり。なんでも言える痛快さ

物語の展開パターンは第1シーズンからさほど変わらないが、むしろその安定感が心地いい。まるで水戸黄門をみているようだ。大門の口癖は「私、失敗しないので」。もし主役が男性だったならば「失敗しないので」のセリフはなかったかもしれない。何も言わずに黙ってこなす、というのがしっくりくる。

現実に置き換えてみるとよくわかるが、人命に関わらない仕事だとしても「絶対に失敗しない」とはなかなか言い切れないものである。それをきっぱりと言ってのける。

有言実行であるところが見せ場でもあり、見ていて最高にしびれるところだ。水戸黄門でいえば印籠を出すところと似ている。

日経エンターテイメント12月号のインタビューで米倉は、大門未知子についてこう語っている。

「実は、最初の頃は『いたしません』『失敗しないので』って言うのが嫌だったんですよ。でもそう発言することで、未知子自身が己を奮い立たせる部分もあるのだと分かってからは、納得できるようになりました。」

それは設備や道具が揃わない僻地医療の経験から出た自信でも、医師としてのプライドや強がりでもなかった。発することで自分を鼓舞し、追い込んでいたのだ。

癒やしがブームになるほど、自分を癒やすことがテーマになっているが、いつからか癒やすことが大きな目的になっている人も少なくない。しかし大門は反対だ。癒やしを求めることもなく、むしろ強い言葉で自分を奮い立たせている。そこにある種の目新しさもあり、勇姿に心を打たれる人が多いのではないだろうか。 「私、失敗しないので」……声にするのも相当な勇気が必要である。



■かざした手から感じる誠意と愛情

普段、医師免許がなくてもできることはやらない、誰構わずきっぱりと意見する。ムダなことは一切せず定時の17時に帰る。情にほだされることなく組織と一線を引いている大門だが、手術直後だけはちょっと違う。手術を終えた大門は、必ずゴム手袋を外して患者の左側にまわる。そして鎖骨ら辺に3秒ほど手を置いて念を送る。この時ばかりは口を閉じる。演出もキーンという効果音のみで、大門の眼力と手と患者だけが映る。セリフはない。

このセリフの引き算によって、強い信念と「人事を尽くして天命を待つ」という神頼みにも似た部分を垣間見る。「切らなきゃ死ぬよ」患者にも容赦無いストレートな物言いだが、血の通う人間であり、彼女なりの愛情表現だということを感じるシーンだ。



■絶対的な仲間の存在

「メロンです、請求書です」が口癖の神原晶(岸部一徳)。大門未知子が所属する「神原名医紹介所」の所長である。大門の手術が終わると必ず箱に入ったメロンとケタ違いの請求書を持って院長を尋ねる。神原は過去に医師免許をはく奪された元・外科医のようだが、その正体はまだ明かされていない。病院組織の内情に詳しいようで、時折本質をついた言葉を発する。

大門は彼のことを「師匠」と呼ぶが、師弟関係を感じさせないくらい仲が良い。大門はその神原名医紹介所へ帰る。内田有紀演じるフリーランスの麻酔科医も同じ紹介所の所属。オフの日はみんなで麻雀をしている。公私ともに信頼できる仲間がいて、帰る場所がある。だからこそ自信を持って働いているようにも思う。水戸黄門でいうところの助さん格さんといった共に戦うメンバーが揃っているのである。



これらの他にも、39歳という年齢を感じさせないエイジレスな米倉涼子とそのファッション。ときどき出てくる豪華な食事etc…みどころはこの他にもたくさんあるので自分と重ねて見ることで面白さがより増すことだろう。「いたしません」の連続に、ドラマ放送後はスッキリ感と爽快感が得られるはず。

いくつか挙げてみたけれど、ただひとつ残念に思うことがある。それは放送が木曜の夜であること。家に帰る楽しみを与えてくれるのはありがたいが、ドラマをみて爽快感を味わい、奮起したところで金曜日。土日休みの人にとってその効果が金曜だけになってしまうのが何とも惜しいところだ。


(柚月裕実)