牛痘患者の膿を注射して天然痘を防いだのが始まり

かつて多くの人命を奪った恐ろしい感染症の一つに、天然痘がありました。18世紀の末、イギリス人医師エドワード・ジェンナーは、牛痘という牛の感染症にかかった人が天然痘にかからないのを見て、牛痘患者の膿を注射する「種痘」を開発、天然痘の予防に成功しました。天然痘が天然痘ウイルスによることが明らかになる前のことです。

その後、フランス人細菌学者ルイ・パスツールによって、毒性を弱めた病原微生物の注射によって、免疫細胞に病原体を記憶させ、感染症を防ぐワクチンが開発されました。ワクチンは「牛」という言葉に由来していて、パスツールがジェンナーに敬意を表して命名したものです。

現在使われているワクチンは大きく分けて3種類

ワクチンには「生ワクチン」「不活性ワクチン」「トキソイド」の3つがあります。
「生ワクチン」は、生きた病原体の病原性を弱めたもので、接種すると免疫力を長く保つことができますが、副反応として元の病気に似た症状が出ることがあります。免疫不全患者と妊婦には接種できません。
「不活性ワクチン」は、免疫をつけるのに必要な部分を病原体から取り出して無毒化したものです。接種で元の病気にかかることはありませんが、1回では十分な免疫がつきにくく、一度ついた免疫も長く続かないことがあります。
ジフテリア、破傷風のワクチンなどは、細菌の毒素を無毒化した「トキソイド」といわれるものです。

ワクチン接種を2回行うことがあるのはなぜ?

インフルエンザワクチンの場合、13歳未満の子どもは2回接種することが必要とされています。これは、インフルエンザワクチンは不活性ワクチンで、子どもの場合、1回の接種では強い免疫が得られにくいためです。2回目の接種を行うことで抗体がより多く作られ免疫力が高まります(ブースター効果)。
ブースター効果は、気づかないうちに病原体と接触することでも得られます。患者数が少なくなると、自然に感染者と接触してこのブースターを受ける機会が減るため、ワクチンの効果が弱まることがあります。そのため、麻疹のように2回接種が行われるようになったワクチンもあります。

海外では鼻から投与するインフルエンザワクチンもある

現在、日本で一般的に使用されているインフルエンザワクチンは不活性ワクチンですが、アメリカなどではより量の多いワクチンや生ワクチンも使用できるようになっています。鼻の穴にスプレーするタイプの生ワクチンもあり、全身の免疫だけでなく、インフルエンザが最初に感染する気道の粘膜も高める効果が期待されています。

【参考】
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