どうも服部です。昭和時代をさまざまな形で振り返っていくシリーズ記事、前回記事「次期【NHK朝ドラ】のモデル「暮しの手帖」昭和40年版をダイジェスト紹介」に引き続き、2016年4月スタートのNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」の主題である雑誌のモデル、「暮しの手帖」昭和40年版を取り上げていきます(なぜ昭和40年版かは、前回記事をご参照ください)。

今回は、51年前に発行されたこの雑誌の、充実したグルメページに特化して紹介していきます。

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まずは、昭和40年2月5日発行の78号に掲載されていた「カットマカロニのすすめ」という特集から。

「どういうものか、私たちは、マカロニを、スパゲチイほど好きではないようです。ながいあいだ、うどんやそばになれてきたためでしょうか それにマカロニ料理というと、つい白いソースでグラタンということになりがちで、とかくみそしょう油の味になれた口には、やはりなじめなかったかもしれません」というリードで始まります。当時の、まだイタリアの食文化が浸透する前の食習慣をよく表しています。

ちなみに、マカロニが日本に入ってきたのは明治時代のことだったそうで、当時であっても真新しい食材というわけではなかったようです。

このマカロニという食材は、安いし、いろいろな料理に活用できるからということで、10種類のレシピが紹介されています。50年前のことなので、現代との感覚のずれがないかと探してみましたが、どれも普通に美味しそう(「カレー粉とトマトの味つけで」なんて、早速真似したいぐらい!)。



続いては、ピンクのテーブルクロスの上に映える、「いちごのババロア」の美味しそうなカラー写真です。昭和40年5月5日発行の79号から(現在は奇数月の25日に発売されている「暮しの手帖」ですが、昭和40年当時は年5回の発行でした)。

昭和40年に発行された「暮しの手帖」のカラーページ数は、全236ページに対して目次4ページを含めて28ページ(80号と81号だけカラーページが20ページと減っていましたが、82号で再び28ページに)。実に効果的にカラーグラビアを使っていました。

こちらは、その作り方ページ。「ほんとうは生クリームを使うところですが、近頃出ている粉末クリームで作って」と書いてあります。この号の4年前、1961年(昭和36年)に発売開始となった森永乳業の「クリープ」を指しているのだと思われます。

そして、みんな大好き(?)「たまごのサンドイッチ」。「ふつうはゆで卵やピクルスをうす切りではさみますが、それを、どちらもミジンにきざむと、切り方がちがうだけでなかなかしゃれた味になります」と紹介されていますが、つなぎにマヨネーズを加えるこの作り方は、どちらかというと現在では主流のような気がします(ピクルスをミジンにして入れるかは抜きにして)。



昭和40年7月5日発行の80号からは、巻頭特集である「合羽橋 日本紀行」をピックアップ。近年は外国人旅行者の人気の観光地と化している東京の合羽橋(かっぱばし)ですが、この号では戦前から東京に住む10人に「合羽橋」について聞いてみたところ、「どこにあってどんな町か」を知っていたのは、1人だけだったと書いてあります。

ご存じない方に簡単に説明すると、ここでいう「合羽橋」とは、上野と浅草のほぼ中間にある商店街のことで、主に飲食店で利用される調理道具などを扱う店が集っています。最近では、レストランの店頭ショーケースに並ぶ「食品サンプル」目当てに国内外から注目の商店街となっていますが、このような調理道具を扱う店が増えていったのは戦後のことだそうで、戦前からの東京在住者にはピンとこなかったのかもしれません。

赤ちょうちんから、寸胴鍋、「本日休業」などの掛札まで、飲食店で必要なアイテムならだいたい取り扱っています。(ページ)一番左上段には、食品サンプルの画像も。当時から扱っていたのですね。最上段にはパフェが、サンドイッチや目玉焼き、ショートケーキなどもあります。50年前からかなりの水準だったのですね。

「これだけあれば小さな中華料理店がひらける」ということで並べられた、合羽橋で手に入る商品の総額は50,640円なり。のれんは1600円、赤ちょうちんは950円、出前箱が1800円で、一番高いのはガス釜の7800円でした。

同じく80号の46ページには、トマトジュースの飲み比べ企画もありました。右から雪印(35円)、森永(35円)、明治屋(35円)、明治(35円)、日冷(30円)、ナガノ(35円)、デルモンテ(40円)、タケダ(60円)、ゴールドパック(30円)、カゴメ(35円)、あけぼの(30円)。タケダのみ420グラムと他の倍近い量が入っています。

味の評価は、あまい、すっぱい、ふつう、素直な味と、商品に手厳しい「暮しの手帖」としては手ぬるいコメントが並びますが、「あまいも すっぱいも あなたの好きずき それだけのちがいです」とのこと。「いろんなジュースのなかでは いちばんまともなジュースです」とべた褒めでした。

80号のレシピ紹介ページは「牛肉料理三皿」他。夏号だけに、バテないように「蛋白も脂肪もたっぷりとって、もりもり働きましょう」とスタミナ料理を紹介しています。

レシピページはこちら。Aの「ロールドビーフ」がカラーページ中央の写真、Bの「めりけんふういため煮」がカラーページ左、Cの「めきしこふういため煮」が右の写真ということのようです。

80号からの最後は、「即席たんめんはどれがおいしいか」という比較企画。最近ではあまり見ることがない「即席たんめん」を17種集めて食べ比べしています。この前年である昭和39年にサンヨー食品から発売された「長崎たんめん」が火付け役となり、当時は即席たんめんがブームになっていたのだそう。2013年には同社の創業60周年を記念して、「長崎たんめん」の復刻版が発売されています(参考:長崎タンメン 5個パック 創業60周年記念復刻版)。



昭和40年9月5日発行の81号には、グルメとは少し離れるかもしれませんが、「暮しの手帖」と日本冶金工業などと共同研究で作り上げたという、ステンレスの流し台の使い勝手についてがまとめられていました。台所の木製の引き出しって、なにか懐かしいですね。

もちろん、81号にもレシピページは充実しています。そのうちの一つ、「中国ふうとりのからあげ」ですが、鶏のもも肉ではなく「すね肉」を使ったレシピです。牛のすね肉はよく聞きますが、鶏の「すね肉」とはもも肉の下の部分だそうで、「かたいので普通はろくに料理にも使いません」とのこと。ある種、レア肉の料理ですね。

81号からの最後は、おなじみの比較企画「18円の牛乳と25円の牛乳ではどちらがおいしいか」。30人の被験者を集め、18円から25円までの牛乳4種類を味比べしてもらうのですが、なんと事前に瓶を移し替えてテストをしたのだそうです。たとえば、25円の「ハイゴールド」の瓶に18円のふつうの牛乳が入っているという感じです。

結果は圧倒的にふつうの牛乳の瓶に入った牛乳を美味しいと答えた人が少なかったようですが、その瓶に入っていたのは、2番目に高い23円のゴールドという牛乳でした。当のふつうの牛乳は、そのゴールドの瓶に入っていて、20人が美味しいと答えていました。人間の味覚は当てになりませんね。



昭和40年の最終号となるのは、12月5日発行の82号。冬だけに、冒頭特集では「奥さまおでんをどうぞ」という内容を持ってきています。

写真は東京・新橋にあるとあるおでん屋さんの店内だそうです。この写真には女性が2人(1人はカウンターの一番手前に座る人の影で見えない)しか写っていませんが、その2人とも当雑誌の編集者らしく、当時のおでん屋は女性には縁遠い店だと言っています。

こういったおでん屋で日頃食べ慣れている男にとっては、たまに家庭で出される「おでん」と称されるものは、「おでん」ではなく単なる「煮もの」だと嘆いているのだと言います。では、おでん屋で出される「おでん」と同じようなものを作るにはどうすればよいかというのが、今特集の趣旨のようです。面白い切り口ですね。

以後、「タネよりもおつゆに金をかける」など、おでん作りのノウハウが語られていきます。

82号では、他の号に比べてもグルメページに力を入れているようで、貴重なカラーページを8ページさいて紹介しています。一つ目は「いためごはん」。おいしく作るには、「ひえたご飯」を使うことだと言っています。

2つ目は「中国ふうなべもの」。右から「ひき肉だんごなべ」、「たらなべ」、「豚とかぶのなべ」です。真ん中の「たらなべ」は「塩と酢とコショーで、ちょっと変わった味になっています」と説明しています。

可愛らしい見た目のこちらは、「ちっちゃなカナッペ」(※冒頭の画像)。パンをこんがり焼いて小さく切った上に、いろいろな具を載せた料理です。美しく盛り付けるコツは「箱に入っている色鉛筆、あの順にぐるっとならべることです」とのこと。なるほど。

最後は「ピーチパイ」。パイ生地を油で揚げて、缶詰のモモを切って載せるだけ。銀食器に囲まれて、とても美しい見映えとなっています。



読めば読むほど引き込まれていく内容の濃さに、すっかり最近の愛読書となってしまった、この「暮しの手帖」昭和40年版。まだまだ興味深い箇所が山ほどあるので、機会があればまた紹介していきたいです。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)