どうも服部です。昭和時代をさまざまな形で振り返っていくシリーズ記事、前回に引き続き、東京オリンピック(1回目)が開催され、東京を中心に一気に先進化した1964年(昭和39年)の新聞広告を紹介していきます。

新聞広告を見れば、当時の流行や日常生活が見えてくるということで、今回は食料品、お菓子、飲み物、アルコール類の広告をまとめていきたいと思います。では、早速見ていきましょう(以下、広告は「朝日新聞縮小版(昭和39年1月~3月版) 発行:日本図書センター」より)。
※商品の企業名は当時のものです。

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■食料品・調味料
・ベル.カレールウ F、ベル.印度カレールウ(ベル食品化学工業)
まずはカレールウから。ベル食品化学工業(現・ベル食品工業)が発売する「カレールウ F」と「印度カレールウ」の広告です。「F」とはフランスを意味しているようで、リンゴ入りのマイルドテイスト。「印度」はスパイシーな大人の味だそう。

今では“日本の国民食”ともいえるカレーライスですが、一般家庭でもよく作られるようになるのは、1960年(昭和35年)頃からだったようです。

・ワンタッチカレールー(江崎グリコ)
同じくカレールウの「グリコ ワンタッチカレー」の広告。1960年(昭和35年)に発売され、板チョコのようにルウを割れ、好きな量だけ使えることで人気となりました。

・明星スープ付ラーメン(明星食品)
次も日本の国民食、ラーメンの広告です。この商品は1962年(昭和37年)に発売された「業界初スープ別添方式の明星スープ付ラーメン(明星HPより)」で、現在のインスタントラーメンにあるように乾燥スープが別添えになった最初の即席ラーメンでした。

この広告では、このラーメンは鍋で2分茹でることでおいしくなります、とうたっています。チキンラーメン(麺にスープの味付けがされたタイプ)のようなお湯を掛けて食べるスタイルからの差別化を図ったようです。

・ケロッグコーンフレーク(日本ケロッグ)
今では朝食の定番として知られるコーンフレークですが、日本で一般に広まったのは1962年(昭和37年)に米国のケロッグ社が日本法人を設立、1963年から販売開始してのことでした。

・三共のケーキミックス(三共)
続いては「朝食はホットケーキを!」というコピーで、新しい朝食習慣を提案している「三共ケーキミックス」の広告。当時、製薬会社の三共(現・第一三共)の系列会社だった「富士製粉株式会社(現・日東富士製粉)」が販売していたようです。

広告の右下には「お米やさんでお求め下さい」と書いてありますが、ビタミン不足の時代にお米にビタミンを浸透させた強化米が製薬会社から発売され、お米屋さんで販売されたのがきっかけで、「お米屋さんにジュースや調味料を配達してもらうという習慣が、しばらくのあいだ定着していった(引用元:新田太郎 戦後ニッポン「ものづくり」流行史)」そうです。

・クノールスープ(味の素)
おなじみ「クノールスープ」が日本で最初に発売されたのは、この広告の年である1964年のこと。お湯を注ぐタイプではなく、お鍋で手作りするものだったよう。このクノールスープが「日本の食卓に初めて洋風スープをもたらした(味の素「クノールのヒストリー」より)」のだそうです。

・ミタス(旭化成)
こちらは旭化成が販売していた、うまみ調味料の「ミタス」の広告(現在はフジ食品工業が業務用のみ販売しているよう)。オリンピックイヤーだけに、「世界切手サービス実施中」でした。

・日清サラダ油(日清製油)
「日清サラダ油」にも期間限定で「世界スポーツ切手」が付いていました。

・めん類用まんみ(キッコーマン)
食料品・調味料の最後はキッコーマンの「めん類用まんみ」の新名称募集のお知らせ。採用された場合の賞金(1点)は20万円でした。いつものように国家公務員大卒上級甲種(いわゆるキャリア組)の初任給と比較してみると、昭和39年は1万9100円(国家公務員の初任給の変遷(PDF))だったので、相当高額です。

結果は「めんみ」と決まりました。現在では北海道限定で販売されていて、キッコーマン自身も「北海道の味」と呼ぶほど、北海道ならではの調味料として確立されています。



■お菓子
・明治チョコレートボール(明治製菓)
お菓子の1つ目は「チョコレートボール」。とはいえ、今もおなじみ「森永チョコボール」ではなく、明治製菓の商品です。チョコの中身はピーナッツ、レーズン、ソフトキャラメルの3種類あったようなので、内容もほぼ同じ。ちなみに、森永の「チョコボール」が発売されたのは、この広告の翌年、1965年(昭和40年)なので(森永「チョコボールヒストリー」より)、明治の方が先に発売されていました。しかも、「森永チョコボール」も発売当初は「森永チョコレートボール」という名称でした。

・ガーナ ミルク チョコレート(ロッテ)
今なお現役の「ロッテ ガーナ ミルク チョコレート」は、この年(1964年)の2月にロッテ初となるチョコレートとして発売されました。「ガーナ」と国名が付いているのに「スイスの味」とうたっているのは、チョコレート開発に携わった技術者がミルクチョコレート発祥の国であるスイスの人だったからだそう(ロッテ「ガーナのレキシ」より)。

・森永ハイクラウン チョコレート(森永製菓)
タバコの箱のようなパッケージでおなじみ「森永ハイクラウン チョコレート」もこの年に発売されました。「日本で いま出ている チョコレートの中で 最高級品です」と自信たっぷり言い切るだけあって、他の商品が20円~50円のところ、堂々70円で販売していました。「世界のアクセサリー」のプレゼント企画も。

・明治モデル チョコレート(明治製菓)
こちらは「明治モデル チョコレート」のカーシリーズ。ブガッティにフェラーリ、ダットサン・フェアレディまで。これは欲しい。おひとつ20円。

・フルヤチョコレート(古谷製菓)
札幌発祥の古谷製菓が発売していた「フルヤチョコレート」を買うと、もれなく「世界のペナント」がもらえるキャンペーンの広告。ペナント、懐かしいですね。ちなみに古谷製菓は、1984年(昭和59年)に倒産したよう。

・グリコの対象菓子(江崎グリコ)
グリコも負けじと、同社の対象商品購入で「世界のワッペン」プレゼントのキャンペーン中。気持ちいいぐらいに、各社とも「世界」「世界」ですね。

・名糖の粉末ジュース、粉末サイダー(名糖産業)
もう一丁、名糖の粉末ジュース・サイダーにも「オリンピックワッペンの引き換え券か、世界のワッペンが必ず入って」いるとのこと。当時の子供たちは、オリンピック開催前に「世界」に興味津々だったのでしょうね。

・チャーミント ハリスガム(カネボウ ハリス)
お菓子の最後は、戦後に代用チューイングガムを開発し、一大ブームを巻き起こしたハリスが、1964年にカネボウ(現・クラシエ)に吸収合併された直後の広告です。6枚入りで20円。



■飲み物
・コカ・コーラ(日本コカ・コーラ)
飲み物の1番手は「コカ・コーラ」。昔からイメージ戦略に長けている感じですね。「《さわやかさ》ひとすじに」、今でも《さわやか》は保ち続けています。

・クラウン コーラ(サントリー)
同じくコーラですが、こちらはアメリカの「ロイヤルクラウン・コーラ」をサントリーがライセンス契約し販売していた「クラウン コーラ」の広告(※冒頭の画像はその一部)。広告モデルは、なんと若大将こと加山雄三です。この「ロイヤルクラウン・コーラ」は現在でもアメリカを中心に販売されていて、コーラの世界シェアとしてはコカ・コーラ、ペプシに次ぐ3位だそうですが、日本ではサントリーを含めこれまで計3社とライセンス契約を結び販売するも、いずれも定着せず。日本人の口には合わないテイストなのでしょうか。

・カルピス(カルピス食品工業)
日本人ならきっと飲んだことがあるでしょうカルピスは、ラベルが新しく変わっての広告です。懐かしのあのマーク。今更ながら、カルピスって滋強飲料だったのですね。

・パンピー オレンジ生ジュース(ピルマン製造)
昭和のオレンジジュースといえば、こちらを思い出す人もいるのではないでしょうか(広告が極小だったため、ちょっとボケボケになってしまいました)。

・明治ゴールド チョコレート牛乳ほか(明治乳業)
再びキャンペーン告知もの。明治のチョコ牛乳などのキャップ15枚を集めて送ると、マイティハーキュリイの指輪とワッペンがもれなくもらえるのだそう。ちなみにマイティハーキュリイは、明治乳業の1社提供でフジテレビで放送されていたアニメ番組のこと。

・明治インスタントコーヒー カフェインレス(明治製菓)
お次は明治のインスタントコーヒー。この頃からカフェインレスの商品が売られていたんですね。「宝塚劇場に招待」というキャンペーンから、女性をターゲットにした商品だったのでしょうか。

・クリープ(森永乳業)
そのコーヒーのお供といえば、粉末生クリームの「クリープ」。「クリープ」はこの広告の3年前となる1961年(昭和36年)に発売開始となったのですが、実は発売より8年前にすでに完成していたのだそうです。発売を延期していた理由は、コーヒーを飲む習慣が日本にはまだ定着していなかったからだとか。詳しくは「クリープの歴史」にて。



■アルコール類
・サッポロジャイアンツ(サッポロビール)
「サッポロビール」は、この年に「日本麦酒」から社名改定となりました。そして、知る人ぞ知る「サッポロジャイアンツ」の広告です。「サッポロジャイアンツ」とは、ビールの大瓶3本分、約2リットル入った瓶ビールで、1963年より発売されていました。

・サッポロ生小びん(サッポロビール)
その「サッポロジャイアンツ」のジョッキ1杯分サイズとして売り出されたのが、こちらの「生小びん」。「お茶がわりに一本」というコピーが笑えます。

・サントリービール(サントリー)
サントリービールでは、「アワを食うべし!」と、ビールの品質の高さを紹介しています。

・アサヒビール スタイニー(朝日麦酒)
アサヒビールは、世界標準の瓶ビールであるスタイニーボトルを発売。先進的なボトルですね。

・白角ハイニッカ(ニッカウヰスキー)、サントリーレッド(サントリー)
最後はウイスキー対決。ニッカウヰスキーとサントリーは、ほぼ同時期に安価で手に入りつつも質にこだわったウイスキーを、くしくも同じ料金で発売。



こうして食品系商品の新聞広告を振り返ってみると、実に時代に敏感に、商品のおまけやキャンペーンとして組み込んでいるのがよく分かりました。まだまだ自動車や医薬品、雑貨など、紹介したい新聞広告があるのですが、次回以降に紹介していきます。

(服部淳@編集ライター、脚本家)