やはり、今シーズンは何が起こるか分からない。
アメリカのウィスコンシン州ミルウォーキーで10月23〜26日(日本時間)に行われたグランプリ(GP)シリーズ第1戦「スケートアメリカ」は、まさに“大番狂わせ”といえる結果に終わった。


→この記事の完全版を見る


■17歳の宇野&宮原、「悔しさ」残る表彰台

今シーズンからシニアに本格参戦した宇野昌磨選手。10月3日に行われた「ジャパンオープン」では、“復活の王者”パトリック・チャン選手(カナダ)を超える185.48という高い得点をマークした。

注目が集まる中でのGPシリーズ初戦。ショートプログラム(SP)で転倒などのミスがあり、フリースケーティング(FS)を4位で迎えた。緊張のせいだろうか、滑り出しはジャパンオープンよりもやや固い印象。冒頭の4トゥループで着氷が乱れたが、何とかこらえた。

“ふっきれた”のは演技後半に入ってからだ。基礎点に1.1倍の加点がつく後半、4トゥループ+2トゥループを成功させると、会場が一気に沸いた。「トゥーランドット」の重厚なボーカルに合わせ、イーグルからのスピン。フィニッシュとともに、自然とスタンディングオベーションが起こった。初出場のGPシリーズで銀メダルという快挙を成し遂げたものの、「出来は40点」と苦笑い。トップとの点差わずか1.52点という結果に、悔しさを隠せなかった。

同じく17歳の宮原知子選手は、昨シーズンの世界選手権で銀メダルに輝き、追う立場から追われる立場に転じた。今大会ではジャンプで踏み切り違反や回転不足などのミスが生じ、「演技には満足していない」とコメント。それでも銅メダルを勝ち得たところに、全日本女王の強さが見える。


■花盛りのロシア勢、15歳の新星が金メダル!

ユリア・リプニツカヤ選手、エリザベータ・トゥクタミシェワ選手、エレーナ・ラジオノワ選手、アデリーナ・ソトニコワ選手など、次々と新しい才能が登場するロシア女子。いまや国際大会よりも、国内での戦いの方が熾烈を極めるのでは?

そんなロシアの新星、15歳のエフゲニア・メドベデワ選手が女子シングルを制した。「ポッと出の新人」のように見えるが、実はこの選手、2014-2015シーズンのジュニアクラスの試合全てで優勝というものすごい成績を残しているのだ。今シーズンからシニアデビューし、GPシリーズ初戦でいきなり金メダル。シニアでも通用することをしっかりと見せつけた。

サバサバとしていて勝ち気な発言が目立つロシア勢のなかで育ってきたということは、相当タフなはず。今後の活躍に加えて、その素顔も気になる選手の1人だ。

男子の金メダルに輝いたのは、地元アメリカのマックス・アーロン選手。今大会には、ソチ冬季五輪銅メダルのデニス・テン選手(カザフスタン)や、中国のエンカン選手などが出場しており、正直この結果は全くの予想外だった。

USクラシックで2012-2013シーズンから3連覇を果たしているものの、昨シーズンのスケートカナダの銅メダル以外は特に目立った成績を残していない。ベテランの域に差しかかる23歳。さらなる上昇のために、相当な練習を積み重ねてきたことが窺える。

SP、FSとも派手さはない。しかし、ほとんどのジャンプに加点がついているのを見ても、1つ1つの要素を丁寧にこなしていることがわかる。ベテランならではの着実な演技で、表彰台常連の選手たちにとって手強い相手になるに違いない。


■名プログラムの予感!J・ブラウンの「愛の香気」

選手の個性と演技構成、音楽が調和したプログラムは、ときに「名プログラム」と呼ばれることがある。本田武史選手の「アランフェス協奏曲」や、荒川静香選手の「トゥーランドット」など、名プログラムと呼ばれる演技は、何年経っても話題にのぼることが多い。

今大会での最も嬉しい発見は、そんな名プログラムの“芽”を見られたことだ。アメリカのジェイソン・ブラウン選手のFS「愛の香気」。イギリス出身の名作曲家、マイケル・ナイマンの詩的な調べは、チャーミングで優しい印象のブラウン選手にぴったりだ。

演技後半のスパイラルシークエンスは、特に印象的だった。アラベスクスパイラルからファンスパイラルへ。音楽に合わせて、流れるようにリンクを縦断するブラウン選手の美しさは、まばたきする間も惜しいほど。もし私が会場にいたら、大声で「ブラボー!」と叫んでいただろう。

もちろん、どんなに優れたプログラムでも、実績なしに評価されることはない。今大会ではSPで8位と出遅れたものの、FSで挽回し銅メダルを勝ち取った。シーズンを通してより完成度を高め、「名プログラム」の仲間入りを果たせるように実績を積み重ねていってほしい。

(東谷好依)