どうも服部です。昭和時代をさまざまな形で振り返っていくシリーズ記事、今回は昭和39年(1964年)の新聞広告を切り出し、当時の日常生活や食生活、流行などを見ていこうと思います。

この記事の完全版(広告画像付き)

昭和39年といえば、東京オリンピック(1回目)が開催された記念すべき年。その開催に向けて街の美化や道路整備などが進み、首都高速が建設され、東海道新幹線も開通しました。東京を中心に、一気に先進化した年だったといえるでしょう。そんな時代を、人々の需要と憧れの象徴である新聞広告を使って振り返っていこうというのが今回の趣旨です。では、早速見ていきましょう(以下、広告は「朝日新聞縮小版(昭和39年1月~3月版) 発行:日本図書センター」より)。



白物家電

まずは台所仕事の手間をどんどんと減らしてくれていった白物家電から。

■冷蔵庫
昭和30年代に家電の「三種の神器」のひとつに数えられていた電気冷蔵庫。当時の普及率はおよそ40%(内閣府「消費動向調査」)と、まだ半数以下の普及率でした。この広告では、高いというイメージを払拭させる内容に徹しています。そういえば、広告にはしっかり定価が表示されていたのですよね(オープン価格以前)。

冷蔵と冷凍が同じドア内にあることが多かった当時の冷蔵庫では、「霜」がつくという問題(頻繁に手入れをしないと、霜というか氷が冷蔵庫中に付着する)があり、霜取りができる機能を押し出しているものも目立ちます。

こちらの冷蔵庫は、温度調節などが冷蔵庫外のパネルでできるので冷気をムダにしないとうたっています。そんな頻繁に調節はしないとは思うのですが……。



■洗濯機
次は冷蔵庫に続く昭和30年代の電化製品の「三種の神器」のひとつ、洗濯機。こちらの商品は二層式洗濯機のようです。以前の記事でも書きましたが、洗浄と脱水、自動給水がされる「全自動洗濯機」は、国産では1965年(昭和40年)に松下電器産業(現・パナソニック)が最初に発売したので、当時はこの二層式洗濯機が最先端でした。

この調理台にもなるという洗濯機は、一層式です。前述のように全自動洗濯機はまだ登場していないので、洗浄だけして、脱水は手動式というタイプです。ハンドルが付いているのが見えますが、脱水用のローラーのハンドルで、ローラーの間に衣類を入れて手動で脱水をするのでした。

これは脱水機だけの広告。一層式を持っているけど、いちいちローラーで脱水するのは面倒という層に売り出したのが、この手の脱水機だったのでしょう。

こちらは洗濯用洗剤の広告です。「ピッチ」という洗濯機向けの泡立ちの少ない新製品のようです。商品一覧には、1990年代まで販売されていた「ザブ」もあります。現在まで生き延びているのは「ニュービーズ」だけですかね。



■その他
現在では一般的である「ステンレス流し」の広告です。1万9900円と、現在価値ではそれほど高く感じられませんが、いつものように国家公務員大卒上級甲種(いわゆるキャリア組)の初任給と比較してみると、昭和39年は1万9100円(国家公務員の初任給の変遷(PDF))なので、ほぼ給料1ヵ月分です。

現在では蛇口をひねればお湯が出てくるのが当たり前になっていますが、当時はこのような「湯沸器」を取り付けない限りは、冷水しか出ませんでした。「電話1本、ハガキ1枚でお湯が出ます」って、いいコピーですね。

炊飯器を2週間お試しできるという広告です。企業名は分かりにくいですが、左上に「東京ガス」とあります。地道にガス利用を普及させるための営業をしていたのですね。

ガス器具を中心に販売するパロマは、電気炊飯器に比べてガス炊飯器がいかに優れているかの比較広告を出しています。火力は3倍強いので美味しく炊け、燃料費は3割安いそう。

掃除機の広告です。こちらは現在でもホテルの客室清掃などで使われているポット型のもの。「ポット型は吸引力がズバぬけて強い」のだそうです。値段は1万5400円と、先ほどの公務員初任給に照らし合わせるとかなり高価です。

この掃除機は当時の一般型のタイプ。なんと「殺菌性」のフィルターが付いてるとのこと。値段は1万4900円と、これまた高価。

比較的新しい家電のように思われる家庭用空気清浄機ですが、日本では松下電器(現・パナソニック)が1962年(昭和37年)に一号機を販売するなど、昭和30年代後半より世に出ていました。


AV機器

■テレビ
昭和30年代の電化製品の「三種の神器」の3つ目をなすのがテレビでした。一般社団法人 家庭電気文化会によると「昭和38(1963)年に1500万件だったテレビ受信契約件数が、昭和42(1967)年には2000万件を突破しています。この間、昭和39(1964)年には東京オリンピックが開催され、これがテレビの世帯普及率を大きく押し上げる契機」と、オリンピック需要について述べています。このサンヨー(三洋電機 、現・パナソニック)の広告(※冒頭の画像)のように、オリンピック開催を大々的にうたうものも見られます。

文字が細かいですが、日の丸の左隣に「日本では一生にいちどしかない“東京オリンピック”」と書いてあります。2020年の東京オリンピック開催が決まっている51年後の現在から見ると、ニンマリしてしまいます。世界に数え切れないほどの都市があるのに、まさか14回後の大会開催地が再び東京になるなんて、想像すらしなかったことでしょうね。

その他のテレビ広告です。ナショナル(現・パナソニック)のテレビは、チャンネル切り替えのハンドルが付いてないですね。ボタンで切り替えるタイプのようです。「新しいフォルム」とうたっているだけあって、画面の割合も大きく他と比べてスタイリッシュです。

こちらは以前も紹介した未来を行きすぎたソニーのポータブルトランジスタテレビの広告。ニューヨークの世界万博への旅行かフォルクスワーゲンが当たるキャンペーンをやっています。



■ラジオ
文字が小さくて読みにくいですが、ソニーの広告によると「ことし(1964年=著者注)は、全国のほとんどの地域でFMの聴取が可能となる年です。」とあります。そんな事情もあり、ラジオ販売プッシュの年でもあったようです。

各社とも持ち歩けることを売りにしているようです。



■テープレコーダー・ステレオ
こちらはテープレコーダーの広告。カセットテープ登場以前のオープンリール式です(カセットテープは日本では1966年に現・TDKが販売開始)。学生が語学を勉強する目的をターゲットにしています。低速と高速の2種類の速度で再生でき、音の調整が自動でできるから最高の音で録音ができるのだそう。音の調整を自分でするタイプを扱ったことがないので、どれだけ画期的なのかは著者にはいまいち伝わらず、ですが。お値段1万9800円。

同じく学生をターゲットに販売されているテープレコーダー。機能が抑えられているのか、1万円ジャストと上のものに比べると約半額です。

ステレオコンポは、いずれもFMが聞けることを強調しています。三菱ステレオは、レコードのピックアップ(レコード針がついたアーム)が、曲が終わると自動で戻る「オートリターン方式」搭載です。

持ち運びもできるレコードプレーヤー。「聞いて歌って2重唱」というコピーからマイクでも付いているのかと思いきや、好きな音楽を聴いて一緒に歌ってくださいというだけのことでした。



■8ミリカメラ
世界初のカートリッジ式8ミリカメラだそうです。広告画像から一瞬何を伝えたいのか分かりにくいですが、25フィート(約7.6メートル)のフィルムが終わっても、カートリッジを逆さにして入れ替えれば、もう25フィート分撮影できるということのよう。

こちらも8ミリ。「’64をエルモでキャッチ」というコピーが秀逸です。



次回は引き続き昭和39年の新聞広告(食品・医薬品・自動車など)を紹介します。

(服部淳@編集ライター、脚本家)