「スポーツやゲームが面白いのは、ルールがあり、皆がそれに従って動くからである」とは、山崎武也氏の『一流の作法』(PHP研究所)の中の言葉。

フィギュアスケートにも、公平性や選手の安全を守るためのさまざまなルールが存在する。しかし、ISU(国際スケート連盟)のルールブックを見ると、「こんなことが減点の対象になるの!?」と驚いてしまうようなものも。

特に、衣装に関するルールは、ムダに厳しかった高校の校則のよう……(遠い目)。今回はそのなかから、3つのルールをご紹介しよう。


ルール1:華やかすぎる衣装はNG!

シーズンのプログラムに合わせてデザインされる衣装は、フィギュアファンにとって楽しみのひとつ。「ジャッジへのアピール力」も採点のポイントになるため、男子選手もスパンコールやレースなどをあしらった華やかな衣装を着ることが多い。

しかし、ISUのルールブックには、「衣装は競技に適したものであること」と記載がある。「音楽表現を引き立てる衣装は好ましいが、華美な衣装やヌードを連想させるものは御法度」と注意書きまでされているのだ。

このルールが規定されたのは、1980年代に活躍した、ドイツのカタリーナ・ヴィット選手の「セクシーすぎる」衣装が物議を醸したため。「ゴムまりみたいな人より体のきれいな女性を見る方がいいでしょう」と発言し、革新的な衣装がたびたび話題になったヴィット選手。

1988年のカルガリー冬季オリンピックでは、スカート部分を羽毛で飾り付けただけの衣装で登場し、他国のコーチから「露出過剰だ」と非難を浴びた。たしかに、そんな大胆な衣装で滑られたら、ジャッジも目のやり場に困るだろう。


ルール2:リンクにものを落とさないこと!

「衣装の一部がリンクに落ちた場合は−1.00の減点」というのもルールのひとつ。ほんの小さな糸くずやスパンコールが、スケート靴のエッジに引っかかって、事故を招く可能性もあるからだ。

2012年の全日本選手権では、高橋大輔選手の衣装に縫い付けられていた羽根がとれてリンクに落ちてしまい、−1.00の減点がつけられた。

「たかが−1.00じゃん」と思うかもしれないが、この減点は、ジャンプで転倒したときと同じ。点数の開きがそれほどない場合、些細な減点が明暗を分けることもあるのだ。装飾が落下する心配のないデザインにするなど、「減点にならない衣装」を作るに超したことはないだろう。


ルール3:女子は「スカート」しか履いちゃダメ!

筆者のお気に入りのひとつに、イタリアのカロリーナ・コストナー選手の2011-2012シーズンの衣装がある。169cmの高身長に、スタイリッシュなダークグレーのパンツスタイル。うっとりするほどの凛々しさで、コストナー選手が出場する試合は、俄然テンションが上がった。

スピンやジャンプの度にヒラヒラと舞うスカートは、清楚で可憐な印象を与える。一方で、女性らしいしなやかな強さを感じさせるのが、パンツスタイルだ。 しかし実は、2004年にルールが改正されるまで、女子選手のパンツスタイルは禁止されていた。

現在でも、アイスダンスの女子選手がパンツスタイルの衣装を着るのはNG。ISUのルールブックにも、「アイスダンスのフリープログラムでは、女子選手はスカート着用のこと」と、しっかり記載されている。「ジェンダーフリーが叫ばれるこのご時世に……!」と、ちょっとびっくりしてしまう。


番外編:ルールの反動!?ウケ狙いの衣装が楽しいエキシビション

一方で、こうしたルールが適用されないエキシビションやアイスショーでは、観客が思わず笑ってしまうような衣装を着る選手も多い。

ロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手は、2001年の世界選手権のエキシビションで、ムキムキの筋肉スーツに身を包んで登場。厚みのある衣装をつけたまま、跳ぶ、踊る、寝転がる!優勝が決まった後ということもあり、ノリノリのパフォーマンスを見せたのだ。

「昨日までの試合では貴公子然とした表情で滑っていたのに、何このギャップ!」と、筆者にフィギュアスケートの面白さを教えてくれたのが、まさにこのプルシェンコ選手の演技だった。

試合では禁止されている小道具も、エキシビションではOK。パイプ椅子やラジカセなど、さまざまなものをリンクに持ち込む選手も多い。浅田真央選手も、2012-2013シーズンのエキシビションで、フリルつきのかわいらしい傘を持って「メリーポピンズ」になりきった。

『カルメン』や『オペラ座の怪人』など、お馴染みの曲を滑る場合は、ほかの選手とかぶらないように、衣装にもさまざまな工夫がほどこされる。今シーズンは、衣装の競い合いにも注目して、フィギュアスケートを観戦してみてはいかがだろうか。

(東谷好依)