TOKYO IDOL FESTIVAL――略してTIF(ティフ)は、お台場で行われる世界最大をうたうアイドル界の一大イベント。本年も8月第一週の土日に行われ、150組を超えるアイドルが登場しました。
今年SKE48を卒業する人気アイドル・松井玲奈も出演を熱望した、アイドルを名乗る人であれば必ず参加したくなるはずの特別なお祭りですが、アイドルファンの間では知らぬ者のいないあるグループの姿がそこにはありませんでした。


■世界一のイベントには不参加。そのころ彼女たちは?

RYUTist(リューティスト)。2011年に結成され、新潟県新潟市の古町を拠点に活動する、のんの(リーダー)、わっかー、ともちぃ、むぅたんからなる四人組です。 グループ名は、新潟の別名「柳都(りゅうと)」と「アーティスト」をくっつけて作られています。

で、彼女たちが何をしていたかというと――まず土曜日は地元のお祭りに出演。コミュニティセンターの駐車場でフリーライブをやっていました。日曜日はホームライブと呼ぶ地元での定期ライブを開催。 これはもう地域密着の鏡ですね。最後までTIF出演を望んでいた僕の心はへし折られましたが。

そんな感じで、ちょっとやそっとでは新潟を出ないのが彼女たちの流儀。
地域のイベント出演と定期ライブのふたつが活動の両輪になっているわけですが、乞われて東京に来たりすると、その場はあっという間に満員御礼になります。TIFには来なかったものの、その翌々週は東京都内のタワーレコード各店でリリースイベントを行い大盛況でした(8月末は横浜アリーナでの大型アイドル・フェスに参加)。

とはいっても、たんに珍しいからオタクがほいほいと集まるわけではありません。
その魅力の源泉はどこにあるのでしょうか。
僕は、いろいろな部分がちょっとずつ過剰なところだと思っています。


■適度なやり過ぎ感が魅力

自分たちの名を知らしめることのできる一大イベントに出ず地元の駐車場で踊っている、地域最優先の姿勢がそもそもちょっと過剰ですよね。それがまずひとつ。

続いてはそのパフォーマンス。この映像をご覧ください。

YouTube(RYUTist / nerve “日本エヴィゾリ化計画“)

2014年に解散したアイドル・グループBiSの解散直前の呼びかけで、賛同者が同じ曲の“踊ってみた”映像を動画サイトにアップしたのですが、固定カメラで撮影し、ことさら加工せずに投稿する人たちが多いなか、RYUTistは古町の複数の場所で撮影を敢行。その映像をひとつに編集しているのです。

さらに振り付けの揃いっぷりゆえに、本人たちは一緒で背景だけ加工されたような不思議な映像になっています。自分たちのミュージックビデオでもないのにこのこだわり。やり過ぎ感がいいですね。

最後に、その素朴に過ぎるキャラクターを挙げておきます。
RYUTistは何でもかんでも、視界に入るすべてを「さん」付けで呼ぶことで(オタクの間では)有名なのですが、ブログやライブのMCなどでこの過剰な「さん」付けを四人全員が発するのを耳にしていると、だんだんシュールな気分になってきます。この子たちはすごく良い子たちなんじゃないかと、気持ちがコロリと転びそうになる瞬間が訪れます。

過剰とはいい換えると一途ということ。ひたむきな人たちを見ているとこちらの気分もしゃきっとします。


■待望の1stアルバムは名曲満載!!

そんなRYUTistが活動4年目にして、ついにファーストアルバム『RYUTist HOME LIVE』をリリースしました。 この作品にはPerfumeの1st『Perfume~Complete Best~』のような輝きが感じられます。同郷の先輩アイドルNegiccoのアルバムを彷彿とさせるといってもいいかもしれません。つまりは、名曲揃い。 そもそもRYUTistの評判は、その楽曲の良さが根底にあるといっても過言ではありません。
セツナ系ポップスの極み「Wind Chime!!~古町のトンネル~」、昭和アイドル歌謡を再現する「チュララ」、終盤のたたみかけが鬼気迫るライブの定番曲「Beat Goes On~約束の場所~」、中毒性の高いメロディが耳に残る「ラリリレル」――この良曲のそろい踏みを過剰といわずしてなんというのか、といったところです。新潟の名所・名物がふんだんに歌詞に盛り込まれているのも程よく過剰です。

アルバムに既発表曲すべてが収録されているわけではありませんが(だいたい結成4年でオリジナル曲がすでに50曲近くあるのです。これ多過ぎでしょう)、その魅力の大きな部分に触れられること請け合いです。ちなみにオリジナル曲と同じくらいのカバー曲があるのもRYUTistの度が過ぎているところで、ぜひ公式ホームページでそのラインナップを見てみてください。唖然としますよ。

何もかもがちょっと過剰――それがこのグループの個性となって、独特の佇まいを生んでいるのではないかと思うのです。
ともあれまずは、ぜひその音に触れてみてください。アイドルがどうこうという前に、音楽生活がきっと豊かになると思います。
そのうえで本人たちにも興味をもったら――今日もたぶん新潟のどこかで踊っている、地元以外にはなかなか会いに来てくれないアイドルではありますが――ぜひライブに足を運んでください。本当に何にでも「さん」付けてますので。

(小池啓介)