夕方に差し掛かると毎日、緊張度が上がる。まずは、退社時刻通りに職場を出られるか。そして、交通機関の遅れなく保育園のお迎えに間に合うか。子どもと家に帰り着くと、息つく間もなく夕食の準備。おなかがすいている子どもに心の中で謝りながらようやく出来上がった食事は、子どもがメイン。ささっと食べさせると次はお風呂。遊びで忙しい子どもの体をなんとか洗って上がってからは、走り回る子どもにパジャマを着せて寝る準備。添い寝で自分もうとうとし、気づけば深夜。台所には夕食の食器がそのまま残っている――。

出産後に仕事復帰した女性なら、誰しも経験が重なるのではないでしょうか。働く女性が育児を同時にこなしていくとき、家事と子どものお世話の両方をほぼ一人で担うケースが多いと言われています。これは、並大抵のことではありません。でも、勤勉で真面目な女性は、なかなか音をあげません。無理をしがちです。残った仕事は、睡眠時間を削って夜にでもやったらいい。疲れていても、気合で何とかしてやろう。そのうえ、スキルアップもしなければと夜更けに勉強をしたり、肌のお手入れをしたりと自分磨きにも時間を使うケースもしばしば。そうやって、慢性的な体のだるさや頭痛に耐えながら、無理を続けている女性が少なくありません。

睡眠6時間以下では危ない!

「自分磨きをする暇があったら寝てください。あなたの睡眠時間は過労死が懸念されるレベルに相当します」

リコーの産業医として社員の心と体の健康維持をサポートしている末廣有希子先生は、必死に頑張る女性を応援しつつ、体への深刻な影響を直視するよう訴えています。日本の働く女性の睡眠時間は6時間前後。実は、これが過労死ラインだというのです。

過労死というと、日本人男性の悪名高い長時間労働を連想しがちです。確かに彼らの睡眠時間も短いのですが、その男性よりもさらに少ないのが子育て世代の働く女性。彼女たちの睡眠不足は、国際的にも群を抜いています。

末廣先生によると、睡眠時間を6時間しか確保できない状態は、過労死ラインと言われる1か月の時間外労働80時間に相当し、このラインを切ると脳心臓疾患の発症リスクが増えるとされています。睡眠時間6時間前後で働く女性は、まさに過労死ラインに。つまり、単に疲れるだけでは済まず、自ら体を危険にさらしてしまうのです。

「実際のところは、女性はホルモンの恩恵で心筋梗塞等の脳心臓疾患発症リスク自体は低いのですが、睡眠不足が、身体愁訴、不安、抑うつ、被害妄想を招いたり、ストレスホルモンであるコルチゾルの分泌量を増加させたりすることがわかっており、うつ病や不安障害の発症につながる危険性があります」と末廣先生は説明します。慢性的な体のだるさや頭痛は、もしかしたら、こうした睡眠不足による体への影響なのかもしれません。

睡眠不足で仕事効率もダウン

「それでもやることが終わらないから、やっぱり夜更かしして仕事をしてしまう」という人に、末廣先生は、仕事効率に関する研究結果を紹介しています。それは、「起床後15時間経過すると、パフォーマンスはおよそ酒気帯び運転レベルにまで下がる」ということです。睡眠不足になると作業効率が悪くなるとよく聞きますが、具体的には、酔っぱらった状態にまで落ち込むのです。

「『気合で睡眠時間を削れば、仕事も家事ももっとできる』と思うかもしれませんが、実はそうではないのです。人間は機械ではないから、ずっと同じパフォーマンスを出すことはできません。女性が健康管理をするときに、とても大事なポイントです」と末廣先生。健康管理というと、まず思い浮かべるのは、食事や運動。睡眠については、健康というより、スキンケアと関連づけて考える女性も多いかもしれません。しかし、睡眠は心身の健康と密接に結びついています。

欲張りすぎず、あきらめることも大事

実は、末廣先生も0歳の双子と5歳の3姉妹を抱え、職場復帰したばかり。まさに子育て中の働く女性です。睡眠時間確保の難しさを肌で感じ、洗濯物はたたまずに籠に入れただけで「良し」とするなど、家事の簡略化に努めているそうです。

「睡眠不足を解消するためには、何かをあきらめることも大切。何もかもと欲張りすぎず優先順位をつけることが、ストレスに押しつぶされないためのポイントです。それでも回らない状況になったら、自分の睡眠時間削減で乗り切るのではなく、家事のアウトソースの導入や家族間の家事育児分担を再び見直すなど、周りを巻き込む方法を検討してください。何より優先すべきものは自分も含めた家族の健康であるはずです」とアドバイスしています。

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