“夏フェス”といえば、フジロックやサマソニなどの音楽フェスティバルをさす。しかし、屋内競技の将棋にも夏フェスが存在するのだ。今回は7月27日に大手町で開催された「サンケイ将棋フェスティバル」に潜入。その様子をレポートしたい。

この将棋フェスは複数の会場(サンケイビル内)で並行してイベントが開催されており、まさに音楽フェスのよう。タイトルホルダーの公開対局やアマチュアの将棋大会が開かれる4階ホール以外にも、1階のビアガーデン前ではプロの指導対局、地下2階の特設会場では将棋講座が開かれる。これらのイベントはすべて無料だ(サイン会は有料)。

開始時間の17時に4階ホールを訪れると、平日にもかかわらず、すでに公開対局の観覧は満席。立ち見も含めて、400名以上の将棋ファンでごった返している。男性だけでなく、羽生名人のファンとみられる女性もちらほら。夏休み期間のせいか、家族連れも多い。やはり将棋ブームが再燃しているのかも。

■30名限定!タイトルホルダーのサイン色紙をゲットせよ

まず目を引いたのが、会場の外へと伸びる長蛇の列。羽生名人と郷田王将の色紙サイン会を待つ人たちだ(1枚3,000円、抽選で各30名限定)。色紙には棋士の座右の銘が揮毫される。いったい、どんな言葉を書くのだろう。人だかりのスキマから必死にのぞきこむと、郷田王将が「晩成」としたためていた。

郷田王将は21歳の若さでタイトルを獲得しており、その時点では早熟だった。しかし、31歳でタイトルを失って以来、無冠の時期が10年ほど続く。そして41歳で「棋王」、44歳になった今年に「王将」を獲得。

就位式では「40代、50代でも成長できる部分があると思うし、そういう姿も見てもらえればと思う」と語っている。だからこそ、色紙の言葉にも重みがある。郷田王将は公開対局に強いので楽しみだ。

■羽生名人と郷田王将の因縁対決!トップレベルの応酬に興奮

羽生名人と郷田王将の席上対局は18時に開始。ふたりとも駒を並べる所作が美しく、勝負に向かう姿勢に品性を感じさせる。会場を走り回っていた子どもたちもイスに座って、ステージを静かに見つめている。

夏の羽生・郷田戦といえば、1993年から3年連続でタイトルを争った王位戦を思い出す。あれから約20年が経ち、お互いタイトルホルダーとして将棋まつりで戦うなんて。非公式戦だからこそ、粋なマッチメイクができるのだろう。

このビッグマッチを大盤で解説するのは、軽快なトークで知られる鈴木大介八段。ゆかた姿の山口恵梨子女流初段が聞き手を務め、アマチュア目線の疑問をぶつけてくれる。対局の持ち時間が15分と短いため、トップレベルの応酬がスピーディに進んでいった。

中盤戦に入ると、解説者の予想手が次々と外れ出す。「私にはわかりませんが、こう指すものなんですねぇ」と鈴木八段が感心することもしばしば。終盤で羽生名人が投了する(負けを認める)と、一瞬の静寂を経て会場から拍手が巻き起こった。

■ゆかた姿の女流棋士と対局!縁台将棋の楽しさを体感する

1階のビアガーデン内には縁台が置かれ、12名の棋士・女流棋士がそれぞれ3面指しを行う。つまり、プロと一度に対局できるのは36名。参加は無料のため、抽選開始の17時には行列ができていた。対局に勝つと、ビアガーデンの商品券までもらえるという。

指導対局は17時半から一斉にスタート。ゆかた姿の女流棋士が並ぶ光景は壮観だ。もっとも目立つ場所には、アイドル的な人気を集める竹俣紅女流1級と中村太地六段が座っている。将棋を知らない人にも足をとめてもらうよう、戦略的に美男美女を配置しているのだろう。実際、大勢のギャラリーのなかにはフラッと見に来た人もいたようだ。

メイン会場の公開対局が終わると、地下2階の特設会場にも大勢の人が集まってきた。講師の戸辺六段の舌もなめらかになり、ドッと笑いが起きる場面も。そして17時の開始から3時間半が経ち、すべてのイベントが終了した。気がついたら、ずっと立ちっぱなしだ。さぁ、ビアガーデンに行こう。

(高橋雄輔)