社長にタメ語で話す――よほどの覚悟を決めるか、よほどのKWか、一般的には非常識扱いされてしまうものだが、ある場所では「タメ口じゃないと気持ち悪い」と言われてしまう世界もある。それがジャニーズ事務所だ。

社長であるジャニー喜多川氏にはタメ語で話すことが許されていると、7月21日放送の文化放送「KちゃんNEWS」でNEWS・小山慶一郎とゲストの増田貴久が敬語にまつわるエピソードを披露した。

■社長にタメ語、先輩にも君付け、独自のスタイルを貫くジャニーズの世界

以前、小山がジャニーさんに電話で用件を伝えようと、敬語で話しはじめたところ「敬語は気持ち悪いよ」と言われたそうだ。一方の増田はそうは言われていないものの、“仲の良い先輩”という感じでフランクに話せると普段の様子を語った。

先輩にも「◯◯くん」と君付けすることで知られるジャニーズ事務所。さすがに、近藤真彦や東山紀之をはじめとする大御所には「マッチさん」と“さん付け”のようだが、デビュー順に先輩・後輩と分かれる世界で、年齢が離れた相手にも君付けをするのは、昔から続くジャニーズの伝統でもある。それだけでなく社長に対してもタメ口をきけるというから驚きだ。敬語を取り払うことによって、もたらされる効果とはどんなものだろうか。

■人生が180度変わった、ケンカもする人間同士の付き合い

KAT-TUNがMCを務める『ザ・少年倶楽部プレミアム』(NHKBS)に滝沢が出演したときのこと。KAT-TUNがまだジャニーズJr.だった時代に、滝沢が大人を相手にコンサートの演出を提案している姿を見ていた。KAT-TUNのメンバー亀梨はそれが「自分たちのベースになっている」と影響を受けていたことを明かした。

コンサートの演出は、出演者以外の誰かが決めたものを決められた通りにこなしているわけではないのだ。同じものは一つとしてない生の舞台やコンサート。それも何年も継続して観客を魅了するエンターテイメントを作り出していかなければならない。前回よりもすごい景色、前回よりもさらに感動するものを求めるファンの期待に答え続けなければファンが離れてしまう。

ジャニー氏のことを「人生を180度変えてくれた人」と慕う滝沢秀明は、『MyoJo』(集英社/5月号)の中でこんなことを語っている。

「多くの少年の人生を180度変えてきた人に、僕は偶然出会い、人間同士の付き合いをさせていただいて、ときには親子になったり、ときには友達になったり、ときにはケンカ相手になったり、その関係がジャニーズ事務所に入ってから今も変わってない。それってすごいなって。」

いまだに舞台の演出をめぐって対立したり、現場で口をきかなかったりすることもあるという。フランクな関係だからこそ自然とディスカッションができて、アイディアが飛び出す。そんな風土があるようだ。

■「10あげるから1を返せ」のジャニズムとは

「15、16才のころかな、“ユーに10あげるから1返しなさい”って言われたことがあって。それは、Jr.がテレビ局の人に挨拶をしなくて、ジャニーさんに怒られたときの言葉なんです。」

チャンスや環境、すべてを与える。だから最低限、挨拶くらいはしろと叱られたそうだ。与えられたものの一つが10代半ばで行ったラスベガスの舞台。滝沢らJr.たちは現地で様々なショーを見せてもらい、その中で言語や国籍を越えたエンターテイメントを学んだという。それも細かく見どころを教えることはなく、自分の感性で学べというスタンスをとる。

「僕らの中ではジャニイズムって言ってたりするんですけどね。(中略)ジャニーズの場合は、ジャニーさんが、きっかけを作ってくれて、あとは自分のことは自分で磨いていくというか、だからジャニズムは人の数だけある」

本当に全てを与えられていたと語る滝沢。恩を返したくても与えられたものの大きさを思えば、奮闘する姿を見せることが精一杯と感謝しきれない様子が伝わってきた。

フランクな関係性があり、質問をすれば「自分が思うならそのとおりやんなよ」と一言。口を開いたかと思えば、そのアドバイスは的を射ている。なんとも叶わない相手である。もはやタメ語かどうかなんて小さなことに思えてくる。

先日の『水曜歌謡祭』に出演した近藤真彦。35周年を迎えた彼がこんな言葉を残した。「歌も踊りもまだまだな僕が、後輩に教えられるものは仕事へ打ち込む姿勢」

育てたタレントが人気と共に成長し続け、いまなお現役で走り続けている。後に続く者も、一座の座長として後輩を率いて活躍中。そんな先輩の背中に影響を受けた後輩たちが続々と育っていく。それも誰かのマネではなく、みんなオリジナリティをもって成長しているからすごい。

ジャニーさんに褒められたことがないという滝沢。10を与えてどれくらいのリターンがあったのか、どんな評価をしているのかは社長ご本人にしかわからないことだが、1以上の、それも多種多様のリターンを感じていそうだ。

(柚月裕実)