「将棋」と聞くと、地味で堅苦しいイメージを抱く人が多いだろう。しかし、従来のイメージをくつがえす“ヒト・モノ・コト”がさまざまな分野で注目を集めている。今回はその基礎知識をザックリ紹介。これを読めば、新しい将棋ブームのポイントがわかるはずだ。

まずは、深夜帯で2ケタの高視聴率をほこるバラエティ番組『月曜から夜ふかし』。その人気コーナーが、株主優待で暮らす桐谷さん(将棋の元プロ棋士)に密着するシリーズである。有効期限までに株主優待券を使い切るため、ママチャリで激走する姿が話題になり、将棋連盟から桐谷さんグッズ(うちわ、ハンドタオルなど)が発売されている。


ほかにも、トーク番組『アウト×デラックス』には元名人の加藤一二三九段(愛称:ひふみん)が準レギュラーとして出演。ハイトーンボイスで語る無邪気な自慢話、常人離れした食欲、長すぎるネクタイなど、愛らしい“アウト”なキャラクターで人気を集めている。先日、60冊限定で発売されたサイン本はネットショップで1時間以内に完売した。


|ニコニコ動画の隆盛で“観る将”が増加

前述したユニークな棋士以外にも、将棋界には数々の人気者がいる。テレビだけではなく、ニコニコ動画などネットメディアへの露出が増えたことで観る将(イベントや対局を観る専門の将棋ファン)が増加。活躍するイケメン棋士や美人棋士が注目されるようになったのだ。

イケメン棋士の代表格といえるのは、NHKのニュース番組にレギュラー出演していた中村太地六段。コンピュータソフトと対戦する『電王戦』に出場した斎藤慎太郎六段は、その甘いマスクから「新・西の王子」と呼ばれている。ちなみに「元祖・西の王子」は山崎隆之八段。「東の王子」は昔も今も阿久津主税(ちから)八段である。
なお、美人の女流棋士はきら星のごとくいるため、別の機会に紹介したい。


|人類最強の羽生四冠とコンピュータが戦う「Xデー」は?

そして、いま将棋界に激震をもたらしているのがコンピュータソフトとの戦いだ。もともと将棋は日本の伝統文化であり、高度な知的ゲームである。同じ起源をもつチェスよりも複雑性が高く、すべての手の順列組み合わせは約10の220乗。これは宇宙全体にある素粒子の数を超えるといわれている。

このように非常に複雑なゲーム性ゆえ、1990年代までコンピュータはプロ棋士に太刀打ちできなかった。しかし、複数の技術的なブレークスルーにより、2007年にはトッププロを脅かす実力へと急成長。そして2013年、ドワンゴが主催する『電王戦』でプロ棋士対コンピュータの団体戦がスタートした。

昨年までの戦績はプロ側の2勝1分7敗。真剣勝負としての興行が成立する限界まで追いこまれ、今年は徹底的なコンピュータ対策で初めて勝ち越した。なんとか「棋士」という職業の存在価値を示した後、同社主催の新棋戦『叡王戦』が開幕。このトーナメント大会を勝ち抜いた優勝者が来春にコンピュータ大会の優勝ソフトと対戦する。

今回は最強棋士・羽生四冠が大会に参加していないため、もし優勝者がソフトに負けても人間の完全敗北とはいえない。コンピュータとの真剣勝負はもう少しニコ生で楽しめそうだ。


|新規の女性ファンを開拓した『3月のライオン』

女性の将棋ファンが増えた要因としてあげられるのが、マンガ『3月のライオン』である。『ハチミツとクローバー』の作者・羽海野チカが勝負の世界に生きる人間を描き、2014年に「手塚治虫文化賞」のマンガ大賞を受賞。2012年からは同作品の名を冠した子ども将棋大会が毎年開催されている。

本稿では、新しい将棋ブームの原動力となっているヒト・モノ・コトを駆け足で紹介してきた。ほかにも、自動車を将棋の駒に見立てた「リアル車将棋」、対局中に食べるおやつのスポンサー、誕生目前の外国人女流棋士など、棋界をめぐる話題には事欠かない。次回からはひとつのトピックに焦点をあて、その魅力を深く伝えていきたい。

(高橋 雄輔)