こんにちは、フレネシです。xxx of WONDERの1メンバーとしてのこちらの連載は、テーマが「私の見たUMA」。連載何回目までこのテーマでがんばれるかわかりませんが、ひとまず体験エピソードが尽きるまで、珍獣以上?UMA未満? な私の目撃体験談に付き合っていただけたら幸いです。

●私の見たUMA:file No.1「顔の濃い鯉」

さてさて。

精神的にはおそらく早熟だった私が容姿にコンプレックスを抱くようになったのは、小学生低学年の頃でした。今でこそ日本人形のようなジャパニーズビューティの妖艶な魅力もわかるようになりましたが、当時は、目鼻立ちのくっきりとした、彫りの深い、いわゆる濃い顔に憧れていました。当時人気のあったアイドルや女優、モデルなどの影響もあったかと思いますが、日本人離れした意志の強そうな大人びた濃い顔に自分もなりたいと強く思ったものでした。早く老けたい、そんな風にも思っていました。
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例えば、クラウディア・シファーさんよりはブルック・シールズさん、酒井法子さんよりは菊池桃子さんや立花理佐さん、原田知世さんよりは伊藤かずえさん、細木数子さんよりは宜保愛子さんなど…。「濃い=正義」、そんな図式が頭の中にあったのだと思います。

しかし、強く望んでも自分の顔が変わるわけではありません。また、十にも満たない子供なのでメイク道具を持っているわけでもありません。そこで、写真を撮るときは、平坦な自身の顔にも彫りが生まれるよう、野外での撮影は太陽がまぶしいわけでもないのに太陽がまぶしそうな顔をすることで陰影を作り出すなど、自分なりの彫りを生む裏技を編み出していました。

参考にしたのは、『宇宙刑事ギャバン』の変身前&中の人を演じた、アクション俳優の大葉健二氏。ああ~あの目と眉の距離の近さ… その敵を睨み付ける険しい表情をお手本にしたものですから、一時期の集合写真は「どこか具合でも悪いのかな?」というような険しい顔の写真ばかりになりました。悲運なことに、そのブームは卒業時まで続き、卒業アルバムの個人写真もこの上ない険しさです。一ミリも笑っていません。今となっては、歪んだ己の自意識を後悔するしかありません。

さて、そんな小学3年生のある秋晴れの休日、父がドライブに連れて行ってくれました。方角的には岐阜の中濃の辺りの山中だったかと思います。トンネルをいくつも通り、うねる山道を越えると、右手に大きな池が現れ、古びた貸しボート屋が目に入りました。

「乗ってみるか?」と父が言うので、内心ではボートよりも売店の鯉の餌とホットドッグに心惹かれたものの、せっかくなのでボートに乗せてもらうことにしました。

父がボートを漕ぎ、私はただ乗って景色を眺めているだけだったのですが、途中で徐にジャケットを脱いだ父が私に「持っといてくれ」と言うので、ジャケットを受け取り、たたもうと広げた瞬間、事件が起きました。

ポケットから大量の100円玉がジャラジャラとこぼれ、ボートの床板の溝に落ちていってしまったのです。「どうしよう…」うなだれる私の向かいで、父はこぼれた100円玉について、笑うばかりで全く気にしていませんでしたが、子供にとっては大量の100円玉は疑いようもない大金です。落としたのは自分だし、全部拾わなければ我が家の家計にも響くのではないかと不安で、床板の溝に手を伸ばしたそのとき、ボートの脇に白い鯉がいるのが視野に入りました。

鯉の方をよく見ると、他の鯉とは何やら様子が違います。頭部に、妙な模様があるのです。そして、それが魚離れした、目鼻立ちの整った彫りの深い濃い顔の陰影であることに気が付きました。

「濃い!」

思わず声を上げました。鯉にも顔の薄い・濃いがあるとは…。しかもあんなに美形な濃い鯉がいるとは…。

「お父さん見て! 鯉! 濃い! ねえあの鯉! 濃い! すごい濃い!」

しかし、父は濃い顔の鯉に気付きませんでした。「濃い」と「鯉」を混同してしまったのでしょう。そして、そうこうしているうちに、やがて鯉はすーっと水中に消え、それっきりとなりました。なお、ボートの床板に落とした100円玉は指が届かず、ほとんど拾えませんでした。

それから何年か過ぎて、山形県鶴岡市善宝寺の「人面魚」が写真週刊誌『フライデー』に取り上げられ、社会現象ともいえるほどの人面魚ブームを呼びました。写真を見たら、確かに人の顔のようではあるし、私の見た顔の濃い鯉に遠からずな風貌ではありました。でも、あの池の白い鯉の方がシュッとしてはるかに美形だったと思いましたが。

その後、あの池に人面魚がいるというウワサが出ることもなく、他に目撃者がいないこともあって私自身何かの見間違いだったのかもしれないと思うようになり、次第に気にかけることもなくなりました。

しかし、今になって思うと、水面に現れた白い鯉は確かにギリシャ彫刻のような顔をしていたし、もしかしたら、今もなおあの池にはシュッとした濃い顔の鯉がいるかもしれません。

ちなみに、鯉の寿命はどれほどかと調べてみたところ、通常20~30年、長生きする鯉だと70歳~100歳まで生きるそうです。意外と長生きですね。あの時点で何歳だったのかわかりませんが、まだ生きているのだとしたら、あの顔の濃い鯉、白馬に乗った王子様のような白い鯉、というか白馬のように白い鯉、バタ臭い日本人離れした顔の鯉、一瞬でしたが幼い私のコンプレックスを抉り心を捉えて離さなかったあの鯉、年齢を重ねてより深みを増し一層濃くなったであろうあの鯉にもう一度、会ってみたいなあと思います。

(文・イラスト:フレネシ /xxx of WONDER)

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