どうも服部です。昭和の動画を紐解いていくシリーズ、今回は約75年前となる1939年(昭和14年)に撮影された「ニューヨーク万国博覧会」の映像を紹介したいと思います。

タイトルは「[Amateur film: Medicus collection: New York World's Fair, 1939-40] (Reel 2) (Part I)」(アマチュア撮影:メディクスのコレクション:1939~1940年のニューヨーク万博=著者訳)で、全編カラー映像となっています。

時代背景としては、1937年に勃発した日中戦争開始の2年後、1941年の真珠湾攻撃の2年前という激動の時代でした。では、早速見ていきましょう。

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ニューヨーク万博は、ジョージ・ワシントンの大統領就任150周年を記念して催された万博で、「会話をする(しかもタバコを吸う)ロボット」や、5000年後まで開けない「タイムカプセル」などが話題になったそうです。

こちらは中国のパビリオンのようです。当万博では、「交通ゾーンTransportation Zone」「コミュニケーションとビジネスシステムゾーンCommunications and Business Systems Zone」「食事ゾーンFood Zone」「各国政府ゾーンGovernment Zone」とゾーンやエリアに分かれていましたが、ここは政府ゾーンでしょうか。

奇抜な建物が見えてきました。壁面には「DALI」という文字が書いてあります。そう、あのシュルレアリスム(超現実主義)で知られるスペインの画家、サルバドール・ダリが設計したパビリオンだったのです。パビリオンの建物上では、上着を羽織った水着の女性が、何やら奇妙な踊りをしています。

デザイン関係のお仕事(または勉強)をされている方にはおなじみ、Adobeの「Illustrator」のパッケージにも描かれているサンドロ・ボッティチェッリ画「ヴィーナスの誕生」の足もとには、また別の女性が立っています。巨大なミミズのお化けのようなものもはっています。シュールです。

建物の中に入っていくと、なんか間違っちゃったんじゃないかという水着を着た女性が、水槽の中を泳いでいる光景が。。。この水着、なんと普通隠しているべき女性の胸の部分が全開になっています。他にも、鏡を使っているのか、下着姿の女性が何人もいるかのような仕掛けの展示があり、女性はただ髪の毛をブラシでといたり、髪をかきむしったりしています。

ダリのパビリオンを後にすると、「STRANGE(奇妙な、未知な)」と銘打ったパビリオンが映ります。ハワイのフラダンスのような格好をした女性が舞台に上がっています。

そしてまた強烈なタイトルのパビリオンが……。「ALIVE "OLGA" THE HEADLESS GIRL(生きているオルガ、首なし少女)」という題目で、柱には「HOW LONG CAN SHE LIVE?(どのぐらい彼女は生きられるか?)」と書いてあります。なんということでしょう。

こちらがオルガさんなのでしょうか。手前にはナース姿の女性がいます。暗く、すぐに場面は切り替わってしまうので、どうなっているのかよく理解できません(したくもないですが)。

お次は「FROZEN ALIVE -DEATH DEFYING FEAT-(氷の中で生きる -死をものともしない妙技-)」だそうです。昔の日本の縁日にあった見世物小屋のような万博ですね。

ショーはパビリオン内で行われてるようです。(ほぼ全裸の)女性が氷板に並んでポーズしています。と、次の場面ではすでに氷の中に……。脚がピクピクと動いているのが見えますが、大丈夫なのでしょうか。

続いては「ペンギン・アイランド」。ようやく普通の展示でホッとします。飼育員さんがペンギンに餌をやっています。現代でも動物園や水族館での人気イベントですね。

こちらは南太平洋あたりの民族でしょうか、彼らによるショーが行われています。一人の男性が倒れているのに気付いたこの手前の男性は驚き、何やら準備のため舞台からはけます。

戻ってくると、動物の角が付いた帽子を被り、腰ミノをはいてきました。倒れている男性に呪いのようなものをかけると……、倒れていた男性は立ち上がり、飛び跳ねて踊り出しました。ショー自体よりも、ビクビクしながら見ている観客の様子のほうが気になってしまいます。

ここからはしばし、会場の様子がダイジェストで映されます。

結構スピードが出るゴーカートであったり、75年前にこんなのがあったのかと驚く現在の遊園地にもありそうな遊具であったり、これも現代にあっても受けそうな電動カーらしきがあったりと、あまりに先進的な展示物の数々。

ところ変わって、こちらは「SAVOY」という催し物。ジャズバンドのような演奏があり、男女ダンサーが激しく踊っています。壁面には「WORLD'S GREATEST COLORED DANCERS(世界で最も優れた有色人種のダンサーたち)」と書かれています。アメリカもまだまだ人種差別全盛の時代だったんですね。

「The Drinking Crowd(飲み物の混雑)」という字幕が入ると、水飲み場が映し出されます。今では当たり前のように見かける水飲み場ですが、当時は珍しかったのでしょう。ひっきりなしに人が来ては水を飲んでいきます。

再び字幕が入ります。「The visitors were more interesting than some of the attractions.(来場者たちの様子は、いくつかのアトラクションより見ていて楽しい)」。そんなわけで、少しの間、来場者コレクションです。

ベンチでぐったりとしている初老と思われる紳士。夫婦2人でのやり取りかと思いきや、女性の後ろに子供が隠れていました。ペアルックで歩く女性2人に、歩き疲れた感全開の女性3人組。高齢者用に電動カートも用意されていたようです。こちらは一家そろっての来場。いい思い出になったことでしょう。軍人さんの姿もありました。

この映像の最後は、状況がよく分からないですが、下着姿の女性たちがひたすら映されます(※冒頭の画像)。ショーに出演する女性たちのオフタイムでしょうか。観客の姿も見えることから、アトラクションの一部となっていたのかと思われます。

Wikipedia(英語版)によると、このニューヨーク万博では、女性が非常に肌を露出するコスチュームやトップレス姿で出演するショーがいくつもあり、一部政治家から「低俗すぎる」などの抗議が入ったそうですが、多くの市民は特に問題視することなく受け入れていたのだそうです。今ではとても考えられないですね。

いかがでしたか? 太平洋戦争開始2年前、日本では言論統制が日に日に厳しくなっていく時代に、アメリカではこんなにも先進的で刺激的なイベントが行われていたのかと知ると、驚きを通り越して唖然としてしまいました。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)



※この動画には、一部女性の裸が映るシーンがあります。閲覧にはご注意ください。
※この動画の開始4分ほどはノイズ(雑音)が入っています。音声なしでの閲覧を推奨します。


【動画】「[Amateur film: Medicus collection: New York World's Fair, 1939-40] (Reel 2) (Part I)」